(『天然生活』2024年11月号掲載)
女性が活躍できる産業をつくらなければ、町の発展はない
「つまもの」の一大産地である上勝町では、「彩」というブランドを掲げ、木の葉や花、山菜や稲穂など約300種類を生産しています。
町を支えるこの「葉っぱビジネス」の仕事を行う女性のひとりが、「たけなかファーム」の竹中充代さん。
もみじ、ひいらぎ、梅や桜、稲穂など約50種類のつまものを扱い、消毒剤を使わず自然を生かすことをこだわりにしています。

竹中充代さん。立派なはすいもの葉は、大皿のようにして使われるそう

収穫は高枝ばさみも使う。「木をよく見て、あっちは採りどきやな、こっちはまだやなって、考えながらやっています」
夫や娘、孫と力を合わせながら、やりがいをもって仕事を行う竹中さん。
そんな竹中さんを見て「キラキラしとうね」と笑うのは、40年ほど前、林業やみかん栽培が廃れて活気を失っていた町を再生させるために「彩」を立ち上げた、横石知二さんです。
「女性が活躍できる産業をつくらなければ町の発展はない。その思いで模索して見つけたのが、つまものです。軽くて扱いやすく、美的センスや細やかな作業が重要ですから、まさに女性に最適でした」

農家に信頼され慕われる「いろどり」代表、横石知二さん。杉林を、つまものを採取できる広葉樹に代える「彩山構想」も進行中
横石さんは農家の女性たちと何度も料亭に通ってつまものの種類や使われ方を研究。
ニーズに合わせた葉っぱを生産して売り上げを伸ばし、「彩」に参加する人も増えていきました。
そして、「彩」の販売支援をする「いろどり」を設立し、いち早くパソコンで受注するシステムを取り入れました。
「本来なら農作物は農協に集めて管理しますが、もっとひとりひとりが主役になってほしかった。各自が端末を使って需要や出荷状況を分析して生産計画を立て、みずから注文を受けて出荷する。裁量が増える分だけやりがいも増え、収入にも結びつくだろうと」

全国棚田百選に選ばれた「樫原の棚田」に竹中家の棚田も。「竹中さんのとこはひときわきれいに管理されています」と横石さん
〈撮影/村上伸明 取材・文/熊坂麻美〉
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです