(『天然生活』2024年11月号掲載)
年商2億超えでも「お金のためではなく仕事の喜びのため」
横石さんの先見通り、「彩」の年商は2億円を超えるまでに成長。
農家各自がパソコンやタブレットで注文を受けて出荷する「順位付け」も、モチベーションアップを狙った仕掛けなのです。
「『ただの葉がお金に化けた』と注目されることが多いですが、僕が何よりうれしいのは女性たちがいきいきと輝いていること。1ケースだけ出荷する人もいるし、94歳でがんばっているおばあちゃんもいます。それは稼ぐためでなく仕事が楽しいから。竹中さんの家のように、一生懸命なお母さんに触発されて家族みんなで応援し、それもまた本人の誇りや喜びになる。『彩』に夢中になるほど家が潤い、山や棚田の景観も保たれる。そんな幸せな循環がたくさん生まれていることが、地域にとっても大きな価値になっていると思います」

「いろどり」は上勝町と共同で就業体験のインターンシップを行っている。研修生と農家の交流のアルバム

竹中さんの家も多くの研修生を受け入れてきた。メッセージノートは大事に保管している。「研修が終わった後も年賀状をくれたり泊まりに来てくれたり。この仕事のおかげでつながった縁ですね」
夏が終わると、「いろどり」には赤もみじの注文が殺到し、12月はおせち料理用の出荷が始まります。
「ごっつい忙しゅうなるよ」
そう話す竹中さんの視線は、もっと先も見つめています。
少し前、竹中夫妻は、桃の苗木50本を新しく植えたのです。幼い木を育て、つぼみを出荷できるようになるまで、早くても5年はかかるでしょうか。
横石さんはいいます。
「まだまだ、やってくれるね。やりがいの種をまきつづけて、本当にまぶしいです」
〈いろどりのあゆみ〉
|1986年
「上勝町農業協同組合」のプロジェクトとして、葉や花の出荷をするブランド「彩」が誕生
|1998年
注文システムにパソコンを導入
|1999年
第三セクター企業として、株式会社いろどり設立
|2009年
上勝町をモチーフとしたドラマが放送される
|2010年
上勝町でインターンシップ事業が始まり、研修生の受け入れを開始
|2011年
注文システムにタブレット端末導入
|2012年
葉っぱビジネスをテーマにした映画『人生、いろどり』が全国にて公開
|2018年
生産者の育成拠点「彩山実習園」がオープンする
|2022年
木の事務所に引っ越し

上勝町の間伐材を原材料にした糸で織ったタオル「KINOF」の開発も手がける
〈撮影/村上伸明 取材・文/熊坂麻美〉
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです