(『天然生活』2024年11月号掲載)
ご近所と分かち合う、やさしい日常
京都・西陣での町家暮らしも17年目という美濃羽まゆみさん。
ご近所さんとの交流が増えるにつれ、物をあげたりもらったりすることも日常的になっていったといいます。
庭で野菜がたくさん採れたら、玄関先に並べて自由に持ち帰ってもらう。

庭で収穫した青じそとみょうがは軒先へ
知人から旬の果物を頂いたら、おすそ分けをする。ささやかな喜びを分かち合う、そんなつながりです。

「私だけじゃなく、この地域ではよくあること。物はなくなるけれど、そこで生まれた縁や思い出は次につながっていく気がします」
物に限らず、子どものいる家庭同士で順番にお泊まり会を開いたり、おでかけに連れ出したり、各家庭だけで子育てをするのではなく、共同で子どもを見守り育てることも、ごく自然に行われています。

木箱の中の本をだれでも自由に借りられる「みのわ文庫」。「最近始めた試みです。絵本も置きたいなあ」。かたわらには感想ノートも
「シェアすることで楽しいことは倍に、辛いことは半分こ、ですね」
新しい暮らしの形
お泊まり会やおでかけは、友達家族と協力
子どもたち同士が仲良しのご近所さんとは、よく交替でお泊まり会を開催。
「うちに泊まりに来たり、泊まらせてもらったり。プールやピクニックなどのおでかけも、子どもの友達にも声をかけて一緒に連れて行くこともあります」

お泊まり会は子どもが幼いころから恒例に。「たこ焼きをみんなで焼いたり、夕食の時間も楽しそうでした」
自宅も町家ならではのオープンな雰囲気からか、子どもの友達がたびたび立ち寄ってくれるそう。

子どもの友達を誘って琵琶湖へ。おでかけボランティアで、「くらら庵」の子どもたちと遠出することも

車は所有せず、必要なときはカーシェア。「近くのパーキングで借りられます」
新しい暮らしの形
“ご自由にどうぞ”のコーナーを玄関先に
庭で育てたハーブや果物が豊作のときは、道行く人の目に留まるように「ご自由にどうぞ」の貼り紙とともに軒先へ。
欲しい人が持ち帰れるように並べています。

この日は庭の青じそとみょうがを。「香りがいいみょうがの葉は料理の盛りつけに使えるので、一緒に水差しに入れておきます」。持ち帰り用の新聞紙も添えて
「天候次第では食べ切れないほど採れることもあって。ご近所さんが“ご自由に”と雑貨を並べていたのをヒントに、私も始めました」

4年ほど前に庭を整備し、梅やゆず、ハーブなど食べられる植物を育てている
食器や日用品を出しておくことも。
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<撮影/原 祥子 取材・文/山形恭子 構成/鈴木理恵>
美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
洋裁作家、手づくり暮らし研究家。家族とともに京町家で暮らす。2008年より手がける洋服ブランド「FU-KO basics.」の受注会を開催するほか、子どもの居場所「くらら庵」での活動など多方面で活躍。『美濃羽まゆみさんの手づくりのある暮らし』(扶桑社)、『みんなで着たい、手づくり服』(日本ヴォーグ社)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです