(『天然生活』2024年12月号掲載)
胃腸の調子を整えることで、寒さに負けない体づくり
「冬は寒さは辛いし、空気が乾燥するのは苦手。けれども季節としては、結構好きなんです」と話す榎本美沙さん。その理由は、季節の手仕事が楽しい時季でもあるからです。

「冬の乾燥した日なら、ざるに広げ2日ほど干せばカラカラに」。干し野菜は、びんなどに入れて保管する
「切り干し大根をはじめとした干し野菜や、味噌の寒仕込み、ジンジャーシロップなどなど。初夏の梅や山椒仕事は待ったなしで素材が届き、少し慌ただしいですが、冬の仕込みものは比較的時間に余裕があり、好きなときに取り掛かれるのがありがたいです」
発酵食品は大好きなので、発酵食は一年中欠かさず口にしていますが、冬はとくに酒粕や味噌を使うのが楽しみな季節。こっくりとした味つけが心身ともに温め、おなかの調子も整えてくれます。
「野菜や果物、きのこ類は、干すことで驚くほど栄養価が上がり、うま味も強まるので、干さない理由はないですよね(笑)。酒粕はちょっと敷居が高いと感じる人もいるかもしれませんが、タンパク質やビタミン、アミノ酸、食物繊維など本当に栄養豊富。アイスクリームやチーズケーキなどスイーツに加えてみたり、白あえなんかにちょっと加えてみるのもいい。夫が日本酒好きなので、気になる酒造元のお酒と一緒に取り寄せて、楽しんでいます」
干した野菜や果物で栄養を取り入れる
空気が乾燥する冬は、野菜や果物を干すのに最適な季節です。

毎年「青果ミコト屋」から取り寄せる無農薬柑橘セットの皮を乾燥ピールに
「干すことでうま味がぎゅっと凝縮されるだけでなく、たとえば切り干し大根なら、生とくらべてカルシウムなどの栄養価がぐんとアップ。スープやお味噌汁、サラダなど、幅広く使えます。柑橘の皮はお茶に入れると風味が増し、ビタミンC補給にも」

5mm四方の棒状に切った大根。乾くと驚くほど細くなるので、「少し太いかな?」と思うくらいでも大丈夫

乾燥し終わった大根、大根葉、にんじん。生の大根1本を消費するのは大変でも、乾かせば保存もしやすい
体も心も温まる酒粕をこまめに活用する
さまざまな発酵食品を愛用する榎本さん、とりわけ冬に登場回数が多くなるのは酒粕です。

水少々を加え、電子レンジで少し加熱した酒粕を水でのばし、小鍋で温めはちみつを加えて酒粕甘酒が完成
「味は大好きですがアルコール成分が苦手なので、加熱調理が基本の冬の料理に。粕汁の印象が強く、鮭や根菜で具だくさんにしなければと気負う人も多いですが、ふだんのお味噌汁に加えたり、酒粕甘酒などで気軽に楽しんでいます」

「酒粕の甘酒はトロリとした独特のコクがあり、ゆっくり胃に入っていく感じがして、体がよく温まります」

愛用している広島「今田酒造本店」の「富久長純米酒粕」と、愛知「澤田酒造」の「純米吟醸酒粕」
冬の心がけ3つ
⚫︎ 気分が上がる器を使って料理をする
⚫︎ いつも以上に睡眠時間を確保
⚫︎ 味噌や酒粕を味つけに活用する
<撮影/近藤沙菜 取材・文/田中のり子>
榎本美沙(えのもと・みさ)
料理家・発酵マイスター。発酵食品や季節の食材を使ったシンプルなレシピを、雑誌や書籍、テレビなどで提案している。YouTube「榎本美沙の季節料理」はチャンネル登録者数が35万人を突破、インスタグラムを利用した会員制オンライン教室「榎本美沙の料理教室」も好評。新刊『毎日の発酵食材レシピ手帖』(Gakken)が発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




