• 美術教育研究者の池上貴之が、北欧に息づく「美の喜び」を求めて旅に出ました。訪れたのは、スウェーデンの福祉施設「フォルムヴェルクスタン」。そこで、新たな「美の喜び」と出合いました。

    「興味」を「得意」に変える
    障がい者の個性を生かすということ

    「フォルムヴェルクスタン」の支援員たちは、利用者が持つ「興味」を「得意」へと育てていきます。でも、それは決して簡単なことではありません。

    画像: アトリエでは利用者が思い思いに制作に励む

    アトリエでは利用者が思い思いに制作に励む

    たとえば、トランプが好きな利用者と、一緒にオリジナルのトランプづくりに挑戦してみる。

    それがうまくいったので、今度は洗濯機のボタンや乗り物に興味を持つ利用者と絵を描いてみたものの、じっと座っていられなかった。

    ひょんなことから、フィーカの時間に支援員が利用者に物語を話してみると、彼が静かに耳を傾けているのがわかり、乗り物の本を読み聞かせてみる。

    するとだんだん創作意欲が持続するようになってきた、というように。

    画像: 縫うことが好きな利用者の興味を生かし、支援員とともに仕上げた針刺しのテキスタイル

    縫うことが好きな利用者の興味を生かし、支援員とともに仕上げた針刺しのテキスタイル

    みんな何かに興味を持っています。それは猫だったり、犬だったり。その興味の対象を見つけて、そっとガイドする。私たちは利用者にとってのひとつのツールなんです」

    利用者の「興味」を見つけ、それを「得意」へと結びつけていく。それは、他者へのやさしいまなざしと、高い専門性を持つ支援員がいてこそ可能になるのでしょう。

    障がい者の得意を生かす」という理念を地道に実践していることこそ、「フォルムヴェルクスタン」の大きな特徴なのかもしれません。

    画像: トントンと叩く動きが得意な利用者には、穴あきボードを手元に敷いてもらい、不規則で面白い模様を生み出していく

    トントンと叩く動きが得意な利用者には、穴あきボードを手元に敷いてもらい、不規則で面白い模様を生み出していく

    <撮影/須長檀、池上貴之 取材・文/池上貴之>

    1月10日から、長野「御代田写真美術館」にて
    「konst」×「フォルムヴェルクスタン」のイベントが開催

    軽井沢のアート・デザイン専門福祉プロジェクト「konst(コンスト)」と、スウェーデンのアート・デザイン専門福祉アトリエ「Formverkstan(フォルムヴェルクスタン)」による合同展示販売会が開催されます。

    会期/2026年1月10日(土)~2月1日(日)
    時間/10:00~17:00
    /火・水曜
    会場/MMoP(御代田写真美術館)
    https://mmop.jp/

    主催 一般社団法人konst
    https://konst.jp/
    インスタグラム@konst_jp

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    『美しさをすべての人に』(エレン・ケイ 著/池上貴之 訳)

    『美しさをすべての人に』(エレン・ケイ 著/池上貴之 訳/一般社団法人konst 刊)

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    池上貴之(いけがみ・たかゆき)

    金沢大学准教授。美術教育・デザインが専門。エレン・ケイ『美しさをすべての人に』の翻訳・解説を担当。2026年2月よりNHKオンライン講座で「美しさをすべての人に〜北欧に学ぶ暮らしの哲学〜」を開講予定。
    インスタグラム@taka_ikegami



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