(『天然生活』2025年1月号掲載)
「人はその時の身丈に合った生活をするのが一番です」 高峰秀子
「我慢の先には必ず幸せがある」 松山善三
振り返ればそこに

人は死ぬまでにどのような、そしてどれほど多くの言葉を浴びて過ごすのか。
本、手紙、メール、電話、対話、映画・テレビ……有名無名を問わず間接直接によらず、そのうちで心に残る言葉は幾つあるだろう?
「昨日、庭で洗濯物を干しよったら、えい天気でね。その時青空を見ながら思うたがやき。あぁ、ここが私のおる場所やなって」
三十年前、中学からの同級生が三番目の子供を産んだ頃、電話で私に言った言葉だ。「ここが私のおる場所」、私は感動した。その考え方に。
私は妙に記憶力がよいので、人の発言を覚えている。私に限らず、特に自分が大切に思う相手の言葉は忘れないものだ。
三十五年ほど前だったか、「どうせ私の書いた記事なんか誰も読んでない」と不貞腐れたから、松山が言った、「一所懸命に仕事をしていれば、必ずどこかで誰かが見ていてくれる。僕はそう思って仕事をしてきたよ」
斎藤明美(さいとう・あけみ)
高知県生まれ。津田塾大学卒業。高校教師、テレビ構成作家を経たのち、週刊文春の記者を20年務める。1999年、初の小説「青々と」で第10回日本海文学大賞奨励賞を受賞。著書には『高峰秀子の捨てられない荷物』『最後の日本人』『高峰秀子の流儀』『高峰秀子との仕事』1・2、『家の履歴書』シリーズなどがある。2009年、松山善三・高峰秀子夫妻の養女となる。高峰秀子と松山善三の結婚生活を出会いから晩年まで紹介する『ふたり ~救われた女と救った男』(扶桑社)が発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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貴重なプライベートアルバムと高峰秀子の随筆、言葉、斎藤さんが長年収集した貴重な資料、斎藤さんしか知らない情報を解説に付して、この一組の男女の数奇な運命を描いています。懸命に生きていればきっと未来は開ける、読めば誰もが励まされる一冊です。





