家族それぞれが使いやすくルールをアレンジ
一級建築士として数多くの住宅設計を手がけてきた田中ナオミさん。
夫婦で暮らす住まい兼事務所も、みずから設計を担当しました。
田中さんが考える「家」は「道具」。そこに住む人にとって便利で使い勝手がいいことが一番大切だといいます。
家の中の収納のルールやものを置く場所は、家族みんなで共有する必要があります。
それが難しくてなかなか定着しないなんて声もよく聞きますが、田中さんの夫は決めたことをしっかり守るだけでなく、自分でさらにアップデートしているとか。

洗面所のタオルも使う順番としまう順番が決まっている。使うのは洗面台に近い右端から、しまうのは入り口側の左から。ひとつひとつのルールは「こうしたい」と夫にも説明し、了解を得たうえで互いに実践している。慣れてしまえば意識することなくそれが自然な動作に

寝室にある奥行き30cmの棚を、Tシャツやカットソーなどの、たたんで収納するアイテム置き場に。洗濯を終えたら、衣類の一番下に入れて棚に戻すことをルーティンに
「廊下の壁にアイアンのバーを付けて、バッグや上着をかけられる一時置き場をつくってあるんです。臨機応変に使えばいいと思っていたところ、気づいたら、夫が次に着る予定のショートパンツをかけるのに使っていて。もうベルトも通して、あとははくだけという状態だから身支度がすごくラクそうですね。S字フックにベルトを引っかけてあるんですけど、ウエスト部分を絞ってあるのでズボンではなくバッグのようにも見える。『いかにもズボンがかけてあります』という見た目になっていないところがいいなと思います」

絵画やアートに混じって廊下に吊るされたハーフ丈のパンツが2本。実はこれ、夫が「次に着るもの」として事前準備で置いているのだそう
それぞれがやりやすいかたちでルールをアレンジしつつ、共有したい部分はしっかり統一してお互いに気持ちよく暮らす。
そんなふうに「家を使う」ことができたら、とても快適に日々を過ごせそうです。
「家の中の景色を素敵に、美しく暮らすことも大事。使いやすいという理由で何でもかんでもリビングや玄関に置くのは違うと思うんです。でも『映える』を優先しすぎて生活が不便なのはもったいない。見た目も気にしつつ、ちょうどいい『使える』のやり方を探したいですね」
本記事は、『暮らしのまんなか vol.42』(扶桑社ムック)からの抜粋です。
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家事や暮らし、部屋づくりのアイデアが満載。
11人の「整える」が登場します。
家族、仕事、自分時間など、暮らしのまんなかにある大切にしているものをお聞きするため、みなさんのご自宅におじゃました。今回登場してくださったのは、「北欧、暮らしの道具店」の佐藤友子さん、「日用美」の浅川あやさん、金工作家の川地あや香さん、建築家の田中ナオミさんをはじめとする11人。「整える」を軸に、日々の工夫とアイデアを伺いました。第1章は「暮らしを整える」、第2章は「家を整える」、第3章は「心と体を整える」です。料理は、ウー・ウェンさんの「心と体をゆるめる料理」。読み物は、健康寿命をのばすお風呂の入り方です。今号から、文筆家・一田憲子さんのエッセイ連載がスタートします。
<取材・文/片田理恵 撮影/濱津和貴>
田中ナオミ(たなか・なおみ)
一級建築士、NPO法人家づくりの会会員、一般社団法人住宅医協会認定住宅医。1999年、「田中ナオミアトリエ一級建築士事務所」を設立。住み手を笑顔にする住宅設計者として活躍。著書に『60歳からの暮らしがラクになる住まいの作り方』(主婦と生活社)など。
http://nt-lab.na.coocan.jp/
<訪ねた人>
片田理恵(かただ・りえ)
編集者・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。住まいや食、子育てなど、暮らしをテーマにした取材・執筆を手がける。2023年より、司書としても活動中。






