• 東京・尾山台にあるフランス菓子店「オーボンヴュータン」のオーナーシェフ・河田勝彦さんに、菓子職人として歩んでこられたお話を伺いました。80歳を超えたいまもなお、第一線で働き続ける河田さんの仕事に対する想いとは? 菓子づくりで大切にしていることも教えてもらいました。
    (『天然生活』2024年7月号掲載)

    いま目の前にあることに集中する

    隅々まで磨き上げられた工房では早朝6時から仕事がスタート。河田さんも毎日ここで作業にあたります。

    「仕事中、何を考えているかって? 何も。考えることは多岐にわたってあるけど、いま目の前にあることを集中してしっかりやること。やっていれば、次にすることが読めてくるはずで……。人の生き方もそうだと思います」

    画像: 若いスタッフと一緒に黙々と働く河田さん。「フランスではどの店も先頭きって働いていたのはシェフでした。まるでトップが働かなかったら下はついてこないとばかりに。将来シェフとして働くことがあれば、自分も同じように働こうと思っていました。現場で働いていれば僕もいいたいことがいえます」

    若いスタッフと一緒に黙々と働く河田さん。「フランスではどの店も先頭きって働いていたのはシェフでした。まるでトップが働かなかったら下はついてこないとばかりに。将来シェフとして働くことがあれば、自分も同じように働こうと思っていました。現場で働いていれば僕もいいたいことがいえます」

    午前中はその日、店に出すものをつくり、午後はチョコレートや焼き菓子など保存できるもの、素材づくりなどを行う。

    この素材づくりとは「生のアーモンドを仕入れ、ゆでて皮をむき、キャラメリゼにしてから何度かローラーにかけ、プラリネにする」など2次、3次加工を施してひとつの菓子をつくりあげていくためのもの。素材からつくるには手間と時間がかかり、ここまで手掛ける菓子屋は多くはありません。

    「時代と逆行している生き方かもしれませんが、僕には時代がどうかなんてまったく関係がない。このスタイルが自分には一番合っていると思って長年続けているだけです。だって、うまいのは確実だから」

    画像: 材料が一番いい状態にある瞬間に仕上げないと味が劣化してしまう。菓子づくりにおいては何より大切なことだという

    材料が一番いい状態にある瞬間に仕上げないと味が劣化してしまう。菓子づくりにおいては何より大切なことだという

    甘さは控えるものではなく、秘めるもの

    そして、世の中は甘さ控えめの風潮ですが、河田さんは砂糖の糖分の甘さについてこう語ります。

    「いちごジャムでもいえることですが、僕ら菓子職人は‟甘さ”をどう表現するかなんです。ひと口食べて砂糖の甘さが先に感じられるようでは僕らの負け。

    これはどんな菓子でもそうで、甘さは控えるものではなく、秘めるもの。ここが職人の技術。菓子を追求して行き着く先は、甘さをどう表現するかだと思っています」

    妥協などできない手作業の大切さと、甘さの表現に魂を注ぎ込む姿は、年を経ても変わることなどありません。

    画像: 自分の仕事に没頭するだけでなく、その日をどうこなしていくか、常に職人たちの動きを見て気を配り、むだがない仕事ぶり

    自分の仕事に没頭するだけでなく、その日をどうこなしていくか、常に職人たちの動きを見て気を配り、むだがない仕事ぶり


    〈撮影/星 亘 構成・文/水野恵美子〉

    画像: 甘さは控えるものではなく、秘めるもの

    河田勝彦(かわた・かつひこ)
    1944年生まれ。1967年パリに渡り、菓子屋、レストラン、ホテルなどで約10年修業。その合間各地の郷土菓子を食べ歩く。帰国後1981年、東京・尾山台に「オーボンヴュータン」を開店。フランス伝統菓子の第一人者。

    オーボンヴュータン

    東京都世田谷区等々力2-1-3
    ☎03-3703-8428
    営業時間:10:00~17:00
    ㊡火・水曜日



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