(『天然生活』2025年4月号掲載)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
門前の海辺の集落に小さな明かりが灯る
石川県輪島市門前で1日1組限定の農家民宿「フォレスト」(現在は休業中)を営む森さん、門前のオーベルジュ「杣径(そまみち)」の料理長である北崎裕さん。そして、消防団の活動がひと段落した地元飲食店の店主らも参加してくれて、自然とでき上がった「門前みんなのごはん」。
「門前みんなのごはん」の発案者でもある、料理人の北崎裕さんを訪ねました。
「地震の翌日に門前へ行くと、集落の人たちはビニールハウスに集まって食事をしていました。輪島では地元のシェフたちが炊き出しを始めていて、やはり自分がやるなら門前だと思ったんです」

「杣径」の北崎裕さん

森さん(左)
とはいえ、北崎さんが料理長を務めるオーベルジュ「茶寮 杣径」は2023年にオープンしたばかり。まだあまりつてもありません。
「知り合いだった森さんを炊き出しに誘ったら、地元の人と繋がりのある森さんが、大鍋や、何から何まで準備してくれました」
杣径の建物は地盤が傾き、修復に数年はかかるとのこと。すぐに金沢の日本家屋のオーナーが声をかけてくれて、そこで期間限定の杣径を始めることになりました。


旬の料理を盛り合わせたプレートに、ごはんと味噌汁、煮物碗つき。能登の食材だけでつくる、定食と呼ぶには手の込んだ本格的な和食だ
金沢で昼夜営業し、休みの日は門前での炊き出し。
「いま思えばハードでしたが、なんとか乗り切れましたね。門前の仲間に入れてもらえたのが一番のご褒美です」
その後、杣径のオーナーで塗師の赤木明登さんの決断で、まずは別の建物を仮店舗として「食堂海辺の杣径」をオープンしました。

集落には解体待ちの家も多く、住人も減っています。
「それでも、明かりが灯り、暖かく、おいしいものが食べられる、そんな場所があったらいいなと思ったんです」
昔ながらの町並みを残したいという思いもあります。さらに近隣の建物を数軒譲ってもらい、宿や住居、書店をつくる計画もあるとか。
「八百屋もできたらいいなあ」と北崎さん。杣径の外に出ると、いまは仮設住宅に住んでいるという隣家の方が、前の浜で採った岩のりを干しかごに干す作業をされていました。

型枠を使い干しかごに張った岩のりを、ススキでつくった自家製ミニほうきでペシペシたたく。この辺りでは炙った岩のりを雑煮にも入れる
いまごろ森さんも岩のり採りをしている頃でしょうか。
知恵の詰まった能登の手仕事。町並み同様、なくならずにいてほしい光景です。
〈撮影/長瀬光恵 構成・文/岩本歩弓〉




