自分の好きより、誰かの好きを大切に
大学でインテリアを専攻する傍ら、花の勉強がしたいとフラワーアレンジメントの教室に通っていたという松田さん。その教室でアンティークの器に触れたことが、この世界に興味を持つきっかけだったと振り返ります。
「先生がイギリスのアンティークを収集されていて、アンティークの器に生けさせてくれたんです。枯れたような印象のアンティークと生気のある植物のコントラストがすごくきれいで。二十歳を迎える頃でしたが、“なんだろうこれは”って、言葉にできない感覚がありました」
当時は80年代。世の中にプラスチック製品が一気に増えた時代で、大学で勉強していたインテリアも、モダンなものが中心でした。
「スタイリッシュなものもそれはそれで好きで勉強はしていました。でも、一方で教室で触れるアンティークへの想いが、心のどこかでくすぶっていたように思います」

「私が学生の頃は、バリバリ働くか専業主婦かの二択を迫られる時代で。でも私はその中間でした」と松田さん
そして、本社ビルのゆったりとした雰囲気に惹かれ、とあるアパレル企業のインテリア部門に就職を決めます。しかし、就職と同時にインテリア部門はなくなり、洋服の販売に携わることに。
「でも、服が自分にとっての一番ではないですし、そのうえ仕事の拘束時間が長くて。そうして悶々としていたところに、結婚の話が出たんです。それで結婚を機に仕事を辞め、夫に頼んで、最初の5年間は好きなことをする時間にさせてもらいました」
その間に花屋でアルバイトをして貯金し、パリに何度か滞在。蚤の市を訪れたり、花屋のショーウィンドウを見て回ったり、田舎暮らしを体験したり。興味のあること、やりたいことを行動に移します。

お店は造園業を営む夫の事務所に併設。グリーンに囲まれた穏やかな店先
なかでも大きな発見のひとつだったのが、蚤の市に行くと、アンティークが普通に買える値段で売られていることでした。
「当時、日本で手に入るアンティークといえばアメリカやイギリスが主流で。フランスのものを持ち帰れれば、自分もうれしいですし、喜んでくれる方が大勢いるんじゃないかなと思ったんです」
そして店を始める準備をスタート。縁があって、フランスからの輸入に知識のある人と知り合うことができ、開店準備を手伝ってもらえることになったのも幸運でした。
「ただその頃、子どもが生まれたので、3歳ぐらいになったら店を始めようかなとぼんやり考えていたんです。でも、夫が物件を探しに行き早々に見つけてきてしまって。生後10か月でお店を始めたので、毎日が修羅場でした」と松田さんは笑って話します。

茅ケ崎にある洋菓子の人気店「メゾン ボングウ」のコンフィチュールも。パティシエはアルザスの名店「メゾン フェルベール」で修業した名手
松田さんが好むのは、モノトーンのもの。それでも店には、植物が描かれた華やかな食器や淡いピンクのクロスなど、柄ものや色みのあるものも多くあります。それは、自分の美意識を追求するよりも、誰かを喜ばせたいという気持ちのほうが強いから。

植物が描かれた上品で美しいプレートは、人気アイテムのひとつ
「私はもうただ皆さんにフラットに喜んでいただきたいという想いがベースにあって。お客さんに『ああいう感じのないかしら?』と聞かれたら、『次回の買い付けで探してくるね』って返して。そういう感じが、お店をやっていて一番楽しいですね」

鮮やかな布はインドのカンタ。フランスではインテリアに取り入れる人もいて目にする機会が多いそう
<撮影/林紘輝 取材・文/諸根文奈>
BROCANTE
電話:03-3725-5584(営業中のみ)
営業時間:13:00~18:00
定休日:火・水・木
住所:東京都目黒区自由が丘3-7-7
最寄り駅:東急東横線・大井町線「自由が丘駅」より徒歩5分
https://brocante-jp.biz/
@_brocante/




