(『天然生活』2025年5月号掲載)
わずかな動きで事足りるシンプルさが心地いい
10年ほど前に、広めの一軒家から現在のマンションに移り住んだ松本朱希子さん。コンパクトなこの部屋を見つけたときに「限られたスペースをどうやって使おう」とわくわくしたといいます。
「台所は備え付けの吊り戸棚やシンクを生かしつつ、夫に食卓と台所を仕切る大きな棚をデザインしてもらいました。食卓側には食器棚を、台所側には作業台と収納棚を付けました。台所は大人がひとり通れるくらいの狭さです。広い方が使いやすいと思っていましたが、むだなく作業ができる魅力を日々感じています」

コンパクトながら整った約2畳ほどの台所。「大物はなるべく置かずに、表に出すものは最小限にしています」
一軒家時代は料理中に少し離れた場所までものを取りに行くことに、少々のわずらわしさを感じることもあったそう。でもいまは「パッと振り返る」だけで必要なものが手に取れる、シンプルな動線に心地よさを感じています。
すっきりとしたステンレスの作業台、用途や素材ごとに分類された引き出し、タッパーで整頓された収納など、台所の内側は使いやすく機能的なつくりになっています。
一方で作業台の上の棚には松本さんの「好きなもの」が置かれ、やさしい雰囲気をつくり出しているのが印象的です。

ショーケースのなかには、お気に入りの雑貨や思い出の品、娘の橙ちゃんの手づくり作品を並べて
「台所は一日のなかで一番長くいる場所なので、自分の部屋のような感覚なんです。だから目に入るところに、ほっと気持ちがゆるむものを置いています。たとえば友だちからもらったお土産や旅行先から娘と持ち帰った白樺の小枝。そして水草がゆらゆら揺れる熱帯魚の水槽も。料理中に水草の間を泳ぐ熱帯魚を見るのが好きですね」

水槽にしたのは、アンティークショップで購入した「おせんべい屋さんのガラスのびん」
〈撮影/星 亘 取材・文/飯作紫乃〉
松本朱希子(まつもと・あきこ)
料理家。「かえる食堂」主宰。季節に寄り添った料理を雑誌や書籍で提案している。夫と娘と3人暮らし。著書に『かえる食堂のお弁当』(筑摩書房)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



