「台湾植物の父」早田文蔵博士に想いを馳せる
台北植物園に来たら、忘れずに標本館「腊葉館(さくようかん)」へ足を運んでみてください。
1924年に台湾初の植物標本館として完成したこの場所では、「台湾植物の父」と慕われた早田文蔵(はやた・ぶんぞう)博士の功績をたどることができます。
ここでは、日本統治時代の初期、台湾の森林資源開発調査のために採取された植物材料を保存・分類した「腊葉(押し葉)」の標本が集められています。
早田博士は「タイワンスギ/台湾杉」の命名をはじめ、当時未知のものとされていた台湾植物の分類を研究し、19年間で1,636種に及ぶ植物を命名しています。

早田博士の研究室を再現した部屋

腊葉館に残された植物標本

腊葉館に残された植物標本
植物園を巡るときには、植物の名を記したプレートをのぞき込んでみることをおすすめします。
大きく書かれた中国語名から植物を想像する楽しさもありますが、その下にラテン語で記された学名の末尾に「HAYATA」と刻まれた植物を探して、早田博士の功績に思いを馳せてみてください。

ピンクの花が麗しい「台湾野牡丹藤 Medinilla formosana HAYATA」

やがて黄色い花を咲かせる「阿里山十大功労 Mahonia oiwakensis HAYATA」
植物園の中には、フランス人宣教師ユルバン・ジャン・フォーリー神父の記念碑も静かに佇んでいます。日本での宣教活動を足がかりにしつつ、早田博士の台湾での植物採集を助けた人物で、1901年から台湾に滞在し、亡くなるまでの12年間にわたって、約1万種の植物標本を作成したそうです。

緑の中に佇むフォーリー神父の記念碑
先住民族が暮らす地に根ざす植物
台北植物園には「民族文化植物」を集めたエリアもあります。ここに集められた植物を説明するのにちょうどよい話があります。
20年ほど前にタイヤル族のご婦人のもとで滞在する機会がありました。
ある朝、誘われてマウンテンバイクに乗り、別の集落を目指して約2時間、坂道を登って下ってどんどん山の奥へ入っていきます。さらに1時間ほど歩くと滝へ続く渓谷があり、そこはハーブの宝庫だったのです。
道なりに野生ハーブの説明をしてもらいましたが、いわゆる中医学で使う植物とは違って、まるで雑草のような風貌のものを手に取って、外用から内服までさまざまな活用法を教えてもらいました。そういった植物の中には、料理や染色に利用するものもあります。
彼女にとって植物療法は家庭の中で習い、家族に使うものとして活用してきたそうですが、四季折々植物に寄り添って暮らしているのがよくわかりました。そして現在に至るまで、そんな山奥で大切に守られている植物なのです。

腊葉館前の熱帯植物
〈撮影/田尾沙織 文/石丸沙織〉
石丸沙織(いしまる・さおり)
英国メディカルハーバリスト、アロマセラピスト。イギリスでハーブ医学を学んだのち、東京、香港を経て、2011年より鹿児島県奄美大島在住。地域に根差したハーバリストとして、身近なハーブを暮らしに取り入れたケアを広めている。菓子研究家・長田佳子さんとの共著に『ハーブレッスンブック』(アノニマ・スタジオ)、訳書に『フィンランド発 ヘンリエッタの実践ハーブ療法』(フレグランスジャーナル社)がある。
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メディカルハーバリストの石丸沙織さんと菓子研究家・長田佳子さんは2018年より「herb lesson」を開催してきました。ハーブのテイスティングとそのシェアリングに時間をかけ、教科書的なハーブの知識だけではなく、それらが使う人の心身にどのように響くかを大切にしています。
ハーブティー、ブレンドの考え方、ハーブバス、チンキなどのレメディ、ハーブの風味を味わうお菓子を暮らしに取り入れてみましょう。自分の感覚を大事にする、こころとからだを癒すセルフケアの方法やアイデアをご紹介します。
ハーブとの出会いを通して、新しい自分に出会える一冊です。





