(『天然生活』2025年5月号掲載)
りんごの粉で郷土のおやつ「がっぱら餅」づくり
いたずらっぽく笑みを浮かべ、話は続きます。
「このかぼちゃの粉を片栗粉代わりに使ってみたら、ぜんぜんダメ。てんぷらの衣にもしたけど、それにも向かない。でも、がっぱら餅(※)に入れると味わいがよくなった」
※ 津軽地方に伝わる郷土のおやつ。ごはんなど余っているものを適当に混ぜ合わせ、フライパンに「がばっ」と広げて焼いたことが名の由来に。ミサオさんは米粉、砂糖、塩、重曹、水などを混ぜてつくる。
そのミサオさんのただならぬ探究心にまた驚かされます。頭に浮かんだことは試してみる。それが予想どおりにならなくても、その経験はどこかにつながっていくのです。

「特別な料理ではないけど、食べてみる?」取り分けてくれる料理はみな、どれもおいしい。冷蔵庫にあるものでこしらえ、素材の味をいかすよう味がととのえられる。蒸したブロッコリーをマヨネーズと味噌であえたり、炒めものから出たおいしい汁は、はるさめを投入して吸わせたり、その何気ないセンスが抜群
後日、ミサオさんはりんごの粉を見せてくれ、がっぱら餅に入れて焼いてくれました。ほのかなりんごの赤みが感じられる焼き上がり。
早速、ナイフを入れて端っこを味見するミサオさんの表情はいまひとつのようです。どうしたらもっと味がよくなるだろうか……と、そんなことを考えているふう。
少しでもおいしいもの、少しでも人に喜ばれるものを、といつもそればかり考え、感じたことは行動に移し、何度も繰り返してみる──それがミサオさんの代名詞でもある “笹餅” という手仕事を生みだしてきたのです。

りんごの粉(乾燥させて挽いたもの)を入れて焼いたがっぱら餅

がっぱら餅を味見するミサオさん
〈撮影/衛藤キヨコ 構成・文/水野恵美子〉
桑田ミサオ(くわた・みさお)
1927年青森県津軽生まれ。保育園の用務員を退職後、農協の無人直売所で販売する笹餅をつくり始め、おいしいと評判になり75歳で起業。79歳で津軽鉄道“ストーブ列車”に乗りながら車内販売をはじめると“ミサオおばあちゃんの笹餅”として注目を集め人気に。笹餅づくりは95歳で引退。“笹餅おばあちゃんの手でつくる暮らし”(扶桑社)が発売。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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