(『天然生活』2025年5月号掲載)
あるものを上手に活用。桑田ミサオさんの「心豊かな暮らし」
お金と交換で欲しいものは手に入る便利な時代になりましたが、桑田ミサオさんの日常はそれとは無縁。身の周りにあるものを上手に活用し、智恵と工夫で心豊かな生活を送っています。
ミサオさんが日中を過ごすのは笹餅をつくる工房で、部屋の中心に大きな作業台が置かれ、長年使い慣れた調理道具は手入れをしながら大事にしています。多くの物は持たず、居心地のよさを感じられる場所です。

あるもので料理をつくることがミサオさんの日課。硬いものは食べられないので野菜の切り方にもミサオさん流のひと工夫がされる
収穫した野菜を乾燥させ、パウダー状にして保存
あるとき、ミサオさんはふたつのポリ袋を作業台にのせました。
「こっちはささげの黒豆、こっちはかぼちゃ」
これらは自宅横の畑で収穫したもの。たくさん採れすぎたので乾燥させてから、から炒りして、粉に挽きました。
「こうやって粉にすると、より自然の甘味が出て、素材の味がよくわかるの。黒豆やかぼちゃはクセもないし、牛乳に溶かして飲むと、栄養もあっていいんですよ。あとは餅にからめて食べてもいいし」

袋の粉末は、右がかぼちゃを乾燥させてから粉に挽いたもの、左はささげの黒豆
ミサオさんは笹餅をつくるために餅米を製粉機にかけ、粉に挽いています。その製粉機を使ってこれらをつくったのです。二度挽きしてあるので粒子がとても細かく、サラサラ。
「これをつくるのに、けっこうな手間がかかっているんだよ。りんごがたくさんあれば、りんごも粉にする」
野菜を漬けたり、干したりするのではなく、粉にするという発想に驚き、なぜ、こんなことがひらめくのかと尋ねると、
「かぼちゃがたくさん採れても10個、20個と食べられるわけじゃないから。ただ、むだにするのはもったいない。でもこうやって粉にしておけば、何かの役に立つんでないかなって。いつでも、すぐに使えるでしょ。そんな、ひらめくほどの能力は、私にはありません」

ミサオさんが育てている野菜。支柱を立てているのがささげ。畑の肥料はコンポストに生ごみを入れて発酵させたものを使っている
〈撮影/衛藤キヨコ 構成・文/水野恵美子〉
桑田ミサオ(くわた・みさお)
1927年青森県津軽生まれ。保育園の用務員を退職後、農協の無人直売所で販売する笹餅をつくり始め、おいしいと評判になり75歳で起業。79歳で津軽鉄道“ストーブ列車”に乗りながら車内販売をはじめると“ミサオおばあちゃんの笹餅”として注目を集め人気に。笹餅づくりは95歳で引退。“笹餅おばあちゃんの手でつくる暮らし”(扶桑社)が発売。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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