• 発酵料理家のみなさんに、日々の暮らしに取り入れている知恵と工夫を聞きました。今回は、薬膳・発酵料理家山田奈美さんの、発酵の力で整える暮らしを拝見します。
    (『天然生活』2025年10月号掲載)

    四季や体調に寄り添った、発酵の力で毎日を整える

    日々状態が変わるのが、発酵の面白さ。同じぬか床でも、気温や湿度により味わいに幅がでます。

    「乳酸菌も麹菌も……菌の世界って面白いですよね。発酵食品と向き合っていると、まるで毎日が実験みたいで楽しいんです」

    というわけで、山田家では1年中、大豆も、しょうがも、クコの実も、さまざまな食材があちこちで、発酵を続けています。

    画像: しょうゆは、梅雨明け後は、外気に当てて発酵を促す。家を訪れる友人たちに、ひと回しずつかき回してもらうことも。「みんなでつくった感じがいいでしょう?」

    しょうゆは、梅雨明け後は、外気に当てて発酵を促す。家を訪れる友人たちに、ひと回しずつかき回してもらうことも。「みんなでつくった感じがいいでしょう?」

    発酵生活は、おおらかに。たとえるなら、同居人を増やすような気持ちでいいのです。

    そう捉えてみれば、静かに着々と、容器の中でおいしさを増している自家製発酵食品に、なんだか親しみがわいてきます。

    画像: 風情ある台所

    風情ある台所

    発酵の力で消化を助け、暑さに負けない体に

    薬膳料理も専門にしている山田さん。薬膳と発酵は、やはり密接な関係があるのでしょうか?

    「食材のひとつとして発酵食品が登場することはありますが、直接リンクはしていないと思います。ただ、梅雨から夏にかけては冷たいものを口にすることが多く、結果、脾胃(消化器系)が冷えて弱るといわれています。その結果、食欲がなくなって“気”や“血”をつくれなくなり、まさにこれが夏バテの原因になるんですね。ですから、夏の終わりから秋にかけては弱った胃腸をいたわる食事が大切。発酵食品のほとんどは、酵素の働きで消化がいいものばかりですから、とくにいまの時季には意識してとるといいですね」

    画像: パプリカなど、洋のイメージの野菜も漬ける

    パプリカなど、洋のイメージの野菜も漬ける

    画像: 黒豆黒酢は、皮が破れる程度まで乾煎りした黒豆を黒酢に漬けておくだけ

    黒豆黒酢は、皮が破れる程度まで乾煎りした黒豆を黒酢に漬けておくだけ

    たとえば、乳酸菌や麹菌はタンパク質をやわらかくする効果があります。野菜に比べて消化の際に体に負担がかかる肉や魚は、下味として塩麹や味噌、ヨーグルトを使うことで、体への負担を軽くすることができるのです。

    「あとは、そんなに手づくりにこだわる必要もないんですよ。忘れがちなことですが、しょうゆも酢も酒も、私たち日本人が使い続けてきた調味料は、どれも発酵食品。言い換えれば、昔から食べられてきた日本の食事をとっていれば、体の不調に悩まされることも少なくなるはずなんです」

    画像: 廊下のメモ。冬から春まではメモ下が自家製しょうゆ樽の定位置

    廊下のメモ。冬から春まではメモ下が自家製しょうゆ樽の定位置

    ちなみに、私たちが自家製でつくる発酵食品のほとんどは、主に乳酸菌と麹菌の力を借りるもの。上手につくるには、“酸素”と上手につきあうことがポイントだそう。

    「乳酸菌は酸素が腐敗の原因になるので、乳酸発酵させたいものは容器のサイズはぴったりめのものを選んでしっかり密閉。麹菌は酸素がないと発酵が進まないので、完成までは密閉しない。これを頭の片隅に入れておくと、迷ったときに役立ちますよ」

    山田さんの発酵暮らし3箇条
     おおらかに発酵と向き合う
     日本の調味料を上手に活用
     食べきれる少量で仕込む



    〈撮影/林 紘輝 取材・文/福山雅美〉

    山田奈美(やまだ・なみ)
    「東京薬膳研究所」の武鈴子氏に師事。薬膳の道へ進む。「食べごと研究所」主宰。神奈川・葉山の「古家1681」で開催されるワークショップや料理教室が好評。薬膳を取り入れたレシピも紹介した『山田奈美さんの手仕事を楽しむ古民家暮らし』(扶桑社)も話題に。著書に『簡単。なのにちゃんと薬膳』(家の光協会)など。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    『別冊天然生活 山田奈美さんの手仕事を楽しむ古民家暮らし』(山田奈美・著/扶桑社・刊)

    画像: 体が整う「昔ながらの発酵暮らし」しょうゆも味噌も手づくり!薬膳・発酵料理家の山田奈美さんが“毎日続ける”すこやか生活

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    ◆築100年の古民家でいそしむ、穏やかで心地よい「手仕事」を楽しむ暮らし◆

    春は里山の山菜をいただき、夏はトマトやきゅうりをせっせと加工。

    秋は栗や銀杏を拾い、冬は100本の大根を干してたくあんづくり。

    季節のリズムに合わせた日々は、忙しいけれど、穏やかで心地よく豊かだと薬膳・発酵料理家の山田奈美さんは話します。

    神奈川県・葉山の古民家に暮らす山田さんの、四季折々の手仕事や自然のお手当てなど、暮らしにまつわるあれこれを楽しめる1冊です。

    【目次】
    ・住まいは築100年の古民家
    ・いつか完全な「自給自足」を目指して
    ・薬膳を取り入れた食事づくり
    ・地域とつながる毎週月曜日の「たたき」

    ● 第1章 春の芽吹き、夏の彩りを楽しむ、手仕事レシピ
    ● 第2章 手づくり調味料とお手当て、長年愛用している道具たち
    ● 第3章 樹木が色づく秋、寒さを増す冬を楽しむ、手仕事レシピ



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