• 発酵料理家のみなさんに、日々の暮らしに取り入れている知恵と工夫を聞きました。今回は、発酵研究家・料理家真藤舞衣子さんの、気負わず始める発酵暮らしを拝見します。
    (『天然生活』2025年10月号掲載)

    旬の野菜を食べきることから、気負わず始める発酵暮らし

    旬のものを食べること。食べものをむだにしないこと。この2点をしっかり実践していたら、自然といきついた先は“発酵”でした。

    「私の食に関する考え方は、料理も含めて原点は祖母です。わが家では昔から、床下の大きなポリバケツで漬けられた祖母の手によるぬか漬けが、毎回のように食卓に出ていました。それは食の楽しみのためでもありましたが、むしろ目的としては、『食材をむだなく食べきるため』だったように思います。発酵は、健康や味の深みを増すためでもあるけれど、私にとっては“保存”の意味合いの方が強いんです」

    画像: 棚の上には、自家製の梅干しや味噌、黒にんにくなどの保存食がずらり

    棚の上には、自家製の梅干しや味噌、黒にんにくなどの保存食がずらり

    そんなわけで真藤さんも、使いきれない野菜はぬか床へ。

    「料理の仕事をしていると、小さく切ってしまったりして、ぬか床に入れられない野菜も出てきます。そんなときは、塩もみをして乳酸発酵。とにかく、『食べものを粗末にしない』としつけられてきましたから、『これはぬか漬け、こっちは乳酸発酵』と手が自然に動きます」

    画像: 豆乳メーカーで新鮮な豆乳が味わえるように。「残ったら、そのまま豆乳ヨーグルトにもできます」

    豆乳メーカーで新鮮な豆乳が味わえるように。「残ったら、そのまま豆乳ヨーグルトにもできます」

    発酵手仕事はミニマルに、回し続けることが大切

    発酵の研究を続ける真藤さんですが、常備している自家製発酵調味料は、実はそう多くありません。

    「野菜や旬の食材の発酵食品をつくって食べきるくらいが、私にはちょうどいいんです。きらさないのは、味噌と塩麹、そしてしょうゆ麦麹くらいですね。これらのいいところは、おけばおくほど味わいが深まるところ。消費期限に追われず、むしろ時間をおくことがメリットになるのがいいんです」

    画像: 山椒の塩水漬けも欠かせない旬の手仕事

    山椒の塩水漬けも欠かせない旬の手仕事

    画像: 発酵黒にんにくも常備しているもののひとつ。「滋養がとても強いので1日1粒だけ」

    発酵黒にんにくも常備しているもののひとつ。「滋養がとても強いので1日1粒だけ」

    加えて、信頼できる素材や製法でつくられた市販の発酵調味料があれば、日々の食事は十分。

    手仕事は楽しくて、最初はつい手を広げてしまうけれど、無理は禁物。旬の食材を手に入れ、余ってしまったら発酵の力を利用して保存し、むだなく食べきる。

    発酵は大きく手を広げず、小さく回していく感覚で始めるのが、長く続けられる秘訣だそう。

    「あとは、なんといってもおいしさですよね。いま、発酵ブームともいわれていて、健康面のメリットが大きく取り上げられています。でもそれだけでは結局、生活に根付かないと思っています。いろいろな発酵食品があるけれど、まずはシンプルに味の好みで取り入れる。そうすれば、ちょっと手間がかかってもモチベーションが下がらず、食べ続けたり、つくり続けたりすることができるはず」

    画像: キムチも気軽に手づくり。ポリ袋で仕込めば、雑菌も入りにくいので失敗が少ない

    キムチも気軽に手づくり。ポリ袋で仕込めば、雑菌も入りにくいので失敗が少ない

    さらに、忙しい人こそ発酵の力を借りてほしいとも考えています。なぜなら、最小限の手間で、あとは時間がおいしくしてくれるから。

    「素材そのものの味わいが一段深まっているので、料理がシンプルになるんです。まず、気軽に始められておすすめなのは、野菜の乳酸発酵。ぬか漬けよりもずっと簡単で、よほどのことがない限り失敗もありません。旬の野菜をたくさん手に入れて、残った分を発酵させる。これだけでも続けていれば、自然に体が整うので、ぜひ始めてみてください」

    真藤さんの発酵暮らし3箇条
     旬のものをいただく
     食べ物を使いきる
     おいしさ最優先



    〈撮影/林 紘輝 取材・文/福山雅美〉

    真藤舞衣子(しんどう・まいこ)
    会社勤めを経て京都の大徳寺塔頭で1年間過ごし、フランスへ料理留学。東京での菓子店勤務などののち、料理家として独立。発酵の力を活かしたレシピで人気となる。企業とのコラボレーションや飲食店のディレクションにも積極的に携わる。著書に『発酵美人になりませう。』(宝島社)など。
    インスタグラム@maikodeluxe

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

    『別冊天然生活 梅仕事と四季の保存食』(扶桑社)|amazon.co.jp

    『別冊天然生活 梅仕事と四季の保存食』(真藤舞衣子・著/扶桑社・刊)

    『別冊天然生活 梅仕事と四季の保存食』(扶桑社)|amazon.co.jp

    amazonで見る

    天然生活の人気企画が一冊になりました。料理家・真藤舞衣子さんの、少量でつくる、シンプルでつくりやすい保存食と、保存食を使ったレシピ。あわせて75品です。

    料理家の真藤さんにとって、保存食をつくるということは、時間を味方につける作業です。ふだんの生活では、発酵の力なども借りて「食材をむだなく食べきるため」に役立ちます。 食材が多くとれる季節は「未来の自分への贈り物」として、瓶に詰めておきます。「いつでもおいしいものがある」という心の余裕が、日々の暮らしに豊かさを与えてくれるのです。 この本から、自分が食べたいものを見つけて、ほんの少しの時間を保存食づくりにあててみてください。自然の恵みをむだにせず、未来の自分を助けてくれることができるでしょう。



    This article is a sponsored article by
    ''.