(『天然生活』2015年7月号掲載)
くり返しつくることで生まれる食卓の歴史
「元宝肉(ユアン パオ ロウ)」 ワタナベマキさんの料理ノート。日々の「おいしい」を書き留めてより続き —
くり返しつくられてきた“いつもの”料理
おしゃべりをしているうちに、食卓の支度が整いました。マキさんの料理の撮影は、いつもこう。「いつの間に?」という素早さです。でも、今日の手際のよさは、また格別です。それは、献立すべてが、くり返しつくられてきた“いつもの”料理だからです。
体が、手が、舌が、手順や味つけを記憶し、マキさんは流れるように“いつもの”料理をつくり出してくれました。それは、家族の一日を包み込み、迎え入れてくれるような、まっすぐでほっとする味。
オーソドックスな味わいのなかに、ほんの少し、「わっ」と浮き立つようなうれしさがひそんでいます。
家族が好きな味、元気になる味、幸せになる味を探りながら
日本中の家庭で日々つくられている料理も、きっと、こんな味がするのでしょう。「今日もお疲れさま」「明日も一日がんばりましょう」。そんな願いを込め、私たちは台所に立ち、包丁を動かします。家族が好きな味、元気になる味、幸せになる味を探りながら。
「おいしいね」「あれ、またつくってよ」。そんな声の積み重ねで、「わが家の味」はつくり出されていくのです。そして、その味を、マキさんはせっせとノートにしたためるのです。
料理ノートのくり返しレシピ
ずっと同じ味、時を経て変わった味。家族や友人に評判の料理を料理ノートから選抜してもらいました。
りんごとアーモンドのケーキ ※トップの写真の料理です
材料をさっと混ぜて焼くだけ。くり返しつくりたいのは、こんなふうにシンプルで、やさしい味わいのケーキなのです。
材料(直径25㎝のパイ型1個分)
- りんご(中) 2個
- アーモンドプードル 1/2カップ
- 薄力粉(ふるっておく) 1/2カップ
- 卵 2個
- てんさい糖 80g
- ヨーグルト 1カップ
- グレープシードオイル(菜種油な どでも可) 3/4カップ
- 好みで粉糖 少々
※型にオイルをぬり、薄力粉を薄くはたいておく(分量外)。
※オーブンは180℃に温めておく。
つくり方
- りんごは皮と芯を取り除いて7〜8㎜厚のくし形に切り、型に並べておく。
- ボウルに卵、てんさい糖を入れてよく混ぜ、ヨーグルト、オイルを加えて泡立て器で混ぜる。
- 2にアーモンドプードルと薄力粉を加え、ゴムべらでなめらかになるまで混ぜる。
- 1に3を流し入れてオーブンに入れ、約25分焼く。表面に焼き色がついたら取り出し、粗熱を取る。焼き時間が足りない場合は、さらに5分ほど焼き足す。粗熱が取れたら好みで粉糖をふる。
memo
祖母のレシピにアーモンドプードルを加えるなどして、自分好みに変化させていったもの。ほっとする甘さで、子どもにも、甘いものが苦手な男性にも好評です。
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<料理・スタイリング/ワタナベマキ 撮影/公文美和 構成・文/鈴木麻子(fika)>
ワタナベマキ
グラフィックデザイナーを経て料理家に。複雑じゃないのに、とびきりおいしく、ちょっとしゃれていて。そんな料理が絶大な支持を得ている。著書に『そうざいサラダ』(主婦と生活社)、『整える、調える。』(KADOKAWA)などがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです