(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
「これは何でしょう?」。不思議そうな面持ちで来客が口にするもの—それは、老舗の羊よう羹かんを1cm角に切ってきな粉をまぶしたものです。ようじはもちろん、私の手製です。
事務所も仕事場ももたない私は、打ち合わせも撮影も、プライベートな場所で行います。だから急な来客へのおもてなしも、おのずといつも家族が食べている、さもない品ばかりになります。
いくら老舗の羊羹といえども、ひと口で頰張り切れない大きさでお出しすると、手を出していただけません。
そこで、1cm角に切り、ひとつ、ふたつと器に運び、きな粉をまぶします。すると、さっぱり感が生まれて、完食してくれる。そのうれしさといったら。
羊羹きな粉まぶし
羊羹をひと口大の角切りにし、きな粉をまぶして即席おやつに。番茶のお茶請けにどうぞ
いただきものの和菓子は、庭にある季節の葉にのせて。漬物は、いつも付き物でお出しします。信州人ですね。
洋風の場合は、大きめのお皿に、カップとおやつをともにのせることも。常備しているのは、オーガニックレーズンのラム酒漬けと日本酒漬け、手作り甘酒と煮りんごの冷凍。それに、煮豆でしょうか。
どれを組み合わせてもおいしい、お手軽なもてなしです。
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花梨ペースト
材料(作りやすい分量)
- 花梨 900g
- 酒 100ml
- 蜂蜜 大さじ9
作り方
- 花梨はくし形に切り、芯を切り取る。いったん塩水に浸し、すぐに引き上げて水けをきり、皮ごとすりおろす。
- 鍋に入れ、酒と蜂蜜を加え、火にかけて練り混ぜる。
※市販のクッキーに花梨ペーストをのせ、お茶のおやつに。花梨ペーストは晩秋にまとめて作り、瓶に詰めて保存しています。
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お気に入りのティーカップや紅茶缶。素敵な紅茶缶を見つけるとつい求めてしまいます。
茶器好き。ティーポットはマリアージュフレールのものなど。
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りんごの甘糀がけ
材料(4人分)
- りんご 2個
- 糀 300g
- 水 2と1/2カップ
作り方
- 糀のかたまりを手でほぐし、電気炊飯器の内釜に入れて水を加える。
- 保温スイッチを入れてふたをし、2時間温めたら、甘糀のでき上がり。保存容器に取り出し、粗熱を取る。冷蔵庫で1週間保存できる。
- りんごは皮をむいて食べやすい大きさに切る。鍋に入れ、水をひたひたに注ぎ(分量外)、柔らかくなるまでことこと煮る。冷めるまでおき、味を落ち着かせる。
- 器に3を盛り、2を好みの量だけかける。
<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。