「趣味は、暮らし」と笑う、料理家・横山タカ子さん。日々、保存食をつくり、運針をし、庭の手入れをする、四季とともにある日常を、自分流に、自由に楽しんでいます。それは、遊び心に溢れ、同時にとても美しい。そんな信州の季節に寄り添った、横山さんの四季の暮らしを、ご一緒に、ぜひお楽しみください。今回は、秋の保存食と常備菜のお話です。
(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
秋も早いうちに、栗の実は出はじめます。
近くに栗で有名な小布施があります。地元の方によると、栗の種類は数えきれないほどあるそうですが、そのうち「銀寄(ぎんよせ)」が一番、渋皮煮に適しているとのこと。
私は種類を気に留める暇もないままに栗を手にするや、渋皮煮で保存します。
「渋い」「苦い」味をもつ調味料はなく、食材で摂取するしかありません。栗の渋皮、くるみの渋皮はとても貴重です。
渋皮煮の場合、渋味や苦味を抜きすぎないように注意して手を加えます。「これは、この冬用」と、木の実を抱え込む自分がまるでりすのようと、笑いながら。
干し柿も大事な作業で、柿の皮がないと、冬のたくあん漬けができません。柿はひとつずつむいて、縄に吊るし、たびたびもみ込んで手をかけてあげます。
採れ始めの根菜も、2%の塩で水分を出してから奈良漬けの残った酒粕に入れては、常備菜作りです。本格的な冬の野沢菜漬け、たくあん漬けを食べるまでのお手軽漬物でもあります。
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大根、にんじんの柚子漬け
材料(作りやすい分量)
- 大根 600g
- にんじん 1本
- 糖 野菜の重量の10%
- 塩 野菜の重量の3%
- 酢 野菜の重量の15%
- 柚子の皮(せん切り) 1/2個分
作り方
- 大根、にんじんは、3cm長さのスティック状に切る。
- 保存容器にすべての材料を入れて混ぜる。次の日から食べられる。
黒にんじんのピクルス
材料(作りやすい分量)
- 黒にんじん(またはにんじん) 1本
- A
- 水 100ml
- 酢 75ml
- 砂糖 大さじ3
- 塩 大さじ1/2
作り方
にんじんは2cm長さのスティック状に切り、Aに漬ける。翌日から食べられる。
酒粕の漬物
材料(作りやすい分量)
- にんじん 2本
- 大根 10cm
- 赤大根(または大根)……10cm
- 酒粕 300g
- 砂糖 150g
- 塩 野菜の重量の2%
作り方
- 酒粕を手でほぐして砂糖と混ぜ合わせ、漬物容器に入れる。
- にんじん、大根、赤大根は皮をむき、塩をまぶして、ひと晩おく。
- 2の水けをふき、1に漬け込み、ひと晩おけば完成(好みで熟成させてもよい)。食べるときにさっと水で洗って水けをきり、食べやすい大きさに切って器に盛る。
大根味噌炒め
材料(4人分)
- 大根 1/2本
- 味噌 大さじ2~3
- みりん 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- 赤唐辛子 1本
- ごま油 大さじ1
作り方
- 大根はスライサーか包丁で太めのせん切りにする。
- 味噌、みりん、砂糖を混ぜ合わせる。
- 赤唐辛子は種を取り除き、小口切りにする。
- 鍋にごま油を中火で熱し、1をゆっくり炒める。しんなりしたら2をまわし入れ、3も加えて炒りつける。
<撮影/本間 寛、村林千賀子(酒粕の漬物)>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。