「趣味は、暮らし」と笑う、料理家・横山タカ子さん。日々、保存食をつくり、運針をし、庭の手入れをする、四季とともにある日常を、自分流に、自由に楽しんでいます。それは、遊び心に溢れ、同時にとても美しい。そんな信州の季節に寄り添った、横山さんの四季の暮らしを、ご一緒に、ぜひお楽しみください。今回は、「豆を煮る」お話です。
(横山タカ子・著『信州四季暮し』より)
豆を煮るのは、なんとしても冬が多くなります。秋の採れたてを火にかけ、暖をとりながら煮上がりを待つ時間は、無駄がありません。
我が家の暖房は、薪ストーブ、火鉢に炬燵(こたつ)と、何とも古めかしい、昔方式です。エネルギー源を幾つにも分けておくと、いざというとき、安心です。電気がなくても、マッチ一本で暖がとれ、煮炊きもできる安心感ですね。
豆はもっぱら火鉢で煮ます。火の加減がとてもいいのです。炭は地場産コーナーで求めます。近所の里山産なのですが、雑木だからでしょうか、太かったり、細く曲がっていたり。私は「素敵ね」と話しかけます。
煮るときは、鉄や銅の鍋でほっくりと。花豆やいんげん豆、小豆は、ひと晩塩水に浸してから煮ると皮が破れません。浸水後は安心して火鉢の上へ。
豆のような乾物は、時間という調味料が必要です。レンジでチンも効き目はありません。こじ開けるような気持ちで向き合っても、ますます顔をそむけられます。面白いですね。
豆300g、水500ml、塩大さじ1。ひと晩、この塩水に浸してから新しい水でゆっくり煮ます。
寒天小豆
材料(作りやすい分量)
● 小豆 | 300g |
● 水 | 500ml |
● 塩 | 大さじ1 |
● きび砂糖 | 150g |
● 寒天 | |
・糸寒天 | 5g |
・ 水 | 500ml |
● 黒蜜 | 適量 |
作り方
1 小豆は分量の水に浸し、塩を入れ、ひと晩浸す(皮が破れないようにするため)。
2 水けをきり、たっぷりの新しい水(分量外)でゆでる。沸騰したら10分ゆで、湯を捨てて水をはり直し、やわらかくなるまで煮る。
3 煮汁が少なくなり、やわらかくなったら、砂糖を3回に分けて加える。冷めるまでおく。
4 寒天を作る。糸寒天をたっぷりの水(分量外)でふやかしてから水500mlで煮溶かし、型に入れて冷やす。食べやすく切る。
5 器に4の寒天と3の小豆を入れ、黒蜜をかける。
花豆の甘煮材料(作りやすい分量)
材料(作りやすい分量)
● 花豆 | 300g |
● 水 | 500ml |
● 塩 | 大さじ1 |
● きび砂糖 | 240g |
作り方
1 花豆は、分量の水に浸し、塩を入れ、ひと晩浸し(皮が破れないようにするため)水をきる。
2 たっぷりの新しい水(分量外)に入れてゆでる。沸騰後10分ゆで、湯を捨てて水をはり直し、柔らかく煮る。
3 煮汁が少なくなり、柔らかくなったら、砂糖を3回に分けて加える。冷めるまでおく。
黒豆デザート
材料(作りやすい分量)
● 黒豆 | 300g |
● きび砂糖 | 240g |
● 黒豆の煮汁、エバミルク | 各適量 |
作り方
1 黒豆は洗い、鉄鍋に入れる。
2 熱湯をたっぷりと注ぎ、ひと晩おく。翌日そのまま煮る。煮汁が少なくなったら水を少しずつ足す。柔らかくなったら3回に分けて砂糖を加え冷めるまでおく。
3 器に大さじ2ほどの黒豆を入れ、黒豆の煮汁大さじ2、同量のエバミルクをかける。
<撮影/本間 寛>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。