(『天然生活』2013年2月号掲載)
かき | 11月~
かきはお酒を吸わせて旨味たっぷり 松田美智子
“海のミルク” といわれるほど、滋味に満ちた、かき。生でも、さっと焼いても、フライにしても抜群です。でも、松田さんは、それだけではもったいない、独特のうま味をオイル漬けやオイスターソースに閉じ込めて、もっと楽しんでみませんか、と話します。
「手づくりオイスターソースは、市販品とはひと味異なる、極上の天然エキスです」
まず気をつけたいのは、かきの選び方です。加熱用と生食用とでは、後者の鮮度がよいと誤解されがちですが、その違いは除菌の方法。生食用は殺菌した海水で洗うので、うま味も流れてしまいます。だから、今回のような加工品には、必ず加熱用を使います。
そして次のポイントが洗い方です。粗塩に汚れを吸わせてから、流水の中でふり洗いするのがコツ。そして、ゆっくり酒にひたしてうま味を吸わせれば、準備完了です。
オイスターソースは、中国料理の炒めものや煮ものに欠かせません。
「もともと大好きな調味料なんです。あるとき三陸のかきの取材に行き、むき損じたかきを煮つめて自家用のオイスターソースをつくっているところに立ち会いました。シンプルに煮つめるだけなのですが、それがおいしくて。市販品はカラメルなどで色づけすることが多いのですが、自家製なら、水飴を少々加えて濃度を出すくらいで十分。いとおしくなるほどのうま味です」と松田さん。
青菜炒めに、白菜と豆腐の煮込みに、ひとふりすれば、ぐっと深い味わいになります。
残った身は捨てないで。コロッケにしたりグラタンにしたり、用途はいろいろ。冬の寒さとともに滋味を増すかきで、ぜひ試してみてください。
オイスターソースのつくり方
かきをじっくりじっくり煮つめて凝縮させた珠玉のエキス。簡単に、驚くほどのうま味をもった調味料ができ上がります。冷蔵庫で2週間ほど保存可能です。
材料(つくりやすい分量)
● 粗塩で洗ったかき | 500g |
● 酒 | 1/2カップ |
● 赤とうがらし(種を除く) | 1本 |
● ナンプラー | 大さじ1くらい |
● 水飴 | 小さじ1~大さじ1 |
つくり方
1 洗ったかきを酒にひたし、20分おいて酒とともに土鍋に移し、赤とうがらしを加え15~20分、中火で加熱する。
2 1の鍋からかきの身を取り出し、すり鉢ですりつぶす(1の煮汁はとっておく)。内臓がつぶれることによって、ぐっとうま味が深くなる。
3 つぶしたかきを土鍋に戻し、1の煮汁、ナンプラーを加えて弱火で20分ほど、ときどき混ぜながら加熱する。
4 キッチンペーパーでこし、汁と身に分ける。汁を小鍋に移し、甘さの加減をみながら水飴を加え、2/3量まで煮つめる。
<料理/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子>
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった四季の保存食づくりをベースに、現代の生活でも無理なくできる、季節の食の楽しみを提案。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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