藤井小牧・著『カフェ風精進料理 こまき食堂』より
ごま豆腐のつくり方
なめらかなごま豆腐は、実はとても簡単な料理です。ポイントは、木べらで大きくかき混ぜつづけること。
材料 (つくりやすい分量)
● ごまペースト(白または黒) | 大さじ1 |
● 葛粉 | 40g |
● 水 | 230ml(*) |
● しょうゆ、ゆずこしょう | 各適量 |
*水230mlの半量を豆乳にしてもよい。
つくり方
1 ごまペースト、葛粉、水を、フッ素樹脂加工のフライパンに入れ、葛粉が溶けるまで混ぜ合わせる。
2 1のフライパンを強火にかけ、一気に木べらで練り混ぜる。
3 まとまってきたら、弱火にして7~8分じっくりと、まとまってひとつになるまで練る。
4 食べやすい量をそれぞれラップで包み、ねじって茶巾にする。ねじった根元をゴムでしっかりとしばって、氷水につけて冷やし固める。
5 器にしょうゆを入れ、そこに4をのせ、ゆずこしょうを添える。
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精進料理の主菜
お肉もお魚も使わない、精進料理の主菜。それでも十分、満足できるのは、酒粕やごまペースト、八丁味噌など、うま味とコクのたっぷり出る素材を上手に組み合わせ、取り入れているから。
たとえば高野豆腐などの淡泊な素材は、一度からりと揚げてから味を含ませるなどというひと工夫もしてあります。
精進料理というと、しょうゆとお砂糖でじっくり煮込んだような、いかにも “和” な味つけをイメージされる方も多いかもしれませんが、
「和風でなければならない」などというルールは、まったくありません。
トマト缶やコーンクリーム缶を使うのも自由ですし、カレーだってつくり方によっては立派な精進料理です。
精進料理の考え方
1 五味・五色・五法
五味は、「甘・塩・酸・辛・苦」、五色は「黒・白・赤・黄・青(緑)」、五法は「生・煮る・蒸す・揚げる・炒める」を表します。この、五味・五色・五法を効果的に組み合わせることによって、栄養がととのい、バランスのよい食事をつくることができるのです。また、見た目も美しく、食べる側も楽しい気分になります。
2 「身土不二(しんどふじ)」
人間は自然の中の一部であり、自然環境の中で生かされています。その土地に生きる生物は、その土地で得られる食物を食べることで、その地で生きるための適応力を身につけているという法則が、この「身土不二」です。また、住んでいる土地、地域に身近な産物を大切にするという、「地産地消」を勧める言葉でもあります。
3 「旬」のものを食べる
旬の野菜や山菜にはパワーがあります。旬の時季にはどの野菜も最もエネルギーを蓄えているので、その季節に人間が一番必要とする栄養素や元気をもらうことができるのです。たとえば冬の根菜類は体を温め、夏の瓜類は熱を冷ます効果が。また、旬の野菜はその季節だけでなく、次の季節に合う体をつくります。
4 「一物全体(いちもつぜんたい)」
精進料理の調味料は控えめです。天地の恵みである農産物を大切にし、その素材の持ち味を十分に生かすことが、調理の基本だからです。また、野菜などは丸ごとすべてを使い切ります。命あったものを大事にして粗末にしない考えの根本は、殺生しないことと関連しており、何ひとつ、むだにしないことにつながります。
5 追いかけて逃げるものは食べない
精進料理では、魚も肉も口にしません。何を食べ、何を食べないのか。その簡単な見分け方のひとつが、「追いかけて逃げるものは食べない」です。動物不殺生は、精進料理の基本中の基本。そのこともあり、精進料理のだしにはかつお節が使われることはなく、昆布としいたけなどのきのこが使われているのです。
<料理/藤井小牧 撮影/川村 隆 取材・文/福山雅美>
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。2020年3月に『こまき食堂』(扶桑社)が発売。
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こまきしょくどう
東京都千代田区神田練塀町8-2
TEL.03-5577-5358