• 東京・秋葉原にある、カフェ風精進料理のお店「こまきしょくどう」おかみの藤井小牧さんによる、日々の暮らしや食などを綴る連載です。精進料理のレシピもときどき紹介。今回は、DIYの楽しさに開眼したお話です。

    楽しい。DIY楽しい。

    長袖シャツでは心許なく、もこもこのトレーナーをタンスから引っ張り出してきました。秋が深くなってきましたね。

    先日訪れた道の駅でむかごを買いました。

    小学生の時「あそこの川の橋に蔓が張っている」と、弟と学校帰りに採りに行き、ふたりで合わせても8つくらいの収穫だったのですが、それは大事に手に握り締め嬉々として山の階段を駆け上り、父に渡しました。

    大きな手でふたりの頭を撫でてくれ、その夜はむかごごはん。

    小さく切った昆布と塩をひとつまみ入れスイッチポン。

    家族4人の暖かな食事を彩ってくれた「白いご飯に茶色い水玉」。

    ふと思い出して娘に話しました。秋が深くなる前のご馳走です。

    * * *

    さて、今年の夏に7年目を迎えた「こまきしょくどう」は、いろいろ修理をせねばならないものがありました。

    家電は業者に頼みましたが、できる範囲のことは私がやっています。

    そんななか大仕事です。椅子の座面の張り替えに取り掛かりました。

    7年前にお店をオープンする前、たまたま御徒町のお蕎麦屋さんが店を閉めるということで、テーブルや椅子を全て譲っていただきました。

    当時はそばつゆの香りがまだ残っていましたが、磨きに磨いてきれいにし、匂いもなく新品同然! とはいい難いですが、大変きれいな状態になりました。

    ただ座面が……。大工さんに相談すると、簡単な道具と布で張り替えられるからやってみたらと教えてくれました。

    座面って張り替えられるの? しかも簡単に?

    その椅子は、昔ながらのオレンジ色が懐かしいビニール製の座面でした。

    開店を手伝ってくれていた友人が、見るにみかねて水玉模様の北欧生地を分けてくれ、友人たち総出で張り替えてくれました。

    そして仕上がった椅子たちは新しく生まれ変わり、かわいい水玉にワクワクしていたオープンから7年が過ぎると、座面の角は擦れて薄くなり、色あせ、しみ汚れも気になるように……。

    一念発起! ついに張り替えを決意いたしました。

    早速ネットで張り替えのコツをYouTubeで調べ、「これこれ! 昔やったわ~」と思い出しながら必要な道具をメモしました。

    次は生地選び。都内の某有名生地屋さんを何軒かめぐり、デザイン・素材・生地の厚さ、耐久性など意外になかなかいい布が見当たりません。

    生地を扱っている友人にも聞いてみたりしましたが見つからず、やると決めてからもなかなか進みません。

    そして、IKEAを3軒まわり、やっとのことでよい縞の布に出合いました。

    さて、どれくらいの長さを買うか……。椅子をひっくり返して座面のネジを外し採寸してみると50cm × 50cm。それを20脚分。

    間違えてはいけないので少し長めに購入。ついでに電動ドライバーも購入(オープンの時に大工さんからいただいた電動ドライバーがどうにも動かなかったので)。

    もう、気持ち的には棟梁気分。ひとりだけど……。

    さあ、ついにやるぞ。気合十分で翌朝早めに起き、店で作業開始です。

    まずは布をカット。長い長い布にハサミを入れるのはドキドキだけれど、刃が入り出したら止まらない。快感!

    切り終わった布はよそにおいて置き、椅子をひっくり返し、本体と座面を外すため、電動ドライバーで4カ所のネジを外す。

    画像1: 楽しい。DIY楽しい。

    ネジはなくさないように缶に入れておく。

    外した座面に布を固定していた「タッカー」というホッチキスの親分のような針を、マイナスドライバーで何個か取ったら、バリバリと手でめくり取りはずすだけ。

    意外に簡単です。

    かたく絞った雑巾で座面を拭いて乾かし、新しい布を座面にあてがい、4辺をタッカーで留めたら今度は4つ角に上手にギャザーを寄せながら留めていきます。

    画像2: 楽しい。DIY楽しい。

    缶に入れておいたネジを電動ドライバーで留め直し、最後に防水スプレーをして乾いたらこれで完成。

    画像3: 楽しい。DIY楽しい。

    いやー、楽しい。DIY楽しい。

    同じ作業を朝の仕込みの前に今日は6個、明日も6個、最後はまた早起きして残り全部を張り替えました。

    今年のテーマは「仕事以外に楽しいと思えることを探す」。

    あぁ、これだ、まさに楽しいが見つかった。電動ドライバーと離れがたく、おまけにテーブルのネジまで締め直した。

    締め直すものを全部締めたら頭までしまったのかなんだかしゃきっとしてきました。

    早くお客さん来ないかなー、椅子に気づいてくれないかなーとキッチンの中で仕込みをしながらマスクの下はニヤニヤウキウキとしている日々。

    次は何を直そうかな! と、布団に入りあれこれ考えながら秋の夜長を楽しんでます。



    画像4: 楽しい。DIY楽しい。

    藤井小牧(ふじい・こまき)
    東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。著書『こまき食堂』(扶桑社)が発売中。

    ホームページがリニューアルしました。
    こまきしょくどう 鎌倉不識庵
    https://www.kamakura-komaki.com/

    ウェブショップもできました。
    こまきしょくどう商店
    https://gomagomagohan.stores.jp/

    ※ ※ ※

    天然生活の本『こまき食堂』(藤井 小牧・著)
    天然生活の本
    『こまき食堂』(藤井 小牧・著)

    天然生活の本『こまき食堂』(藤井 小牧・著)

    B5判
    定価:本体 1,400円+税
    ISBN978-4-594-08460-8


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