(『天然生活』2016年9月号掲載)
家族とともにすこやかに過ごす、日々を支えてくれる本
家族が喜ぶたいていのレシピは頭に入っているけれど、ときに、いつもと違う新しい料理をつくってみようと思う。
そんなときに坂井さんはレシピ本を手に取ります。
「テレビに出ていらっしゃると、つい見入ってしまうのが枝元なほみさん。画面や著書から伝わってくるお人柄も、すごく素敵。わが家の、私の味覚にぴったりくる料理家さんなんですよ」
とくに愛読しているのは、こちらの『食べるスープレシピ』。
具材たっぷりで体が温まるレシピの数々は、冬の食卓の常連に。
どのレシピも本当においしそうで、見返せば、一冊ほとんどをつくっていたことに驚きました。
食べるスープレシピ
心も体も元気になる、野菜たっぷりのスープレシピ97。一品でメインのおかずになる大助かりのメニューの数々に圧倒される。素材のおいしさを丸ごと味わえる、冬に大活躍のレシピ本。
枝元なほみ著 世界文化社
同社より改訂版あり
そして、つい書店で買ってしまう一冊といえば、土井善晴さんの「おかずのクッキング」シリーズ。
「善晴さんのお父さまである、土井勝さんの時代からなじんでいますからね。手に入りやすい材料で、そしてシンプルな手順で簡単にでき上がるのがいいんです。確実なおいしさですよね」
毎日つくる料理は、使う素材が少なく、なおかつ手順の少ないものがいい。
凝った料理はたしかにおいしいけれど、特別なときにつくるだけで、いつしか忘れてしまいます。
日常の料理は、2~3回もつくればすっかり頭に入って、手が勝手に動き、わが家の味に変わっていくものがいいのです。
おかずのクッキング
テレビ朝日で放送されている「おかずのクッキング」のテキスト本。土井善晴さんのほか、さまざまな料理家のレシピを豊富に掲載。初心者からベテラン主婦まで、ファンが多い。
テレビ朝日
昨年、初めての著書を出した坂井さん。
そこに書かれている、ていねいでありながら合理的な暮らし方の根本は、ある一冊の本と出合ったことが大きいと話します。
それは、’80年代半ばに出版された『すぐする すぐすむ 快速家事』。
「もう、あれは30年以上も前かしら。彼女の姪御さんと知り合いということもあって、著者である原田知津子さんの主宰する、ハウスキーピングの教室に通っていたんです。華奢なのに、とてもパワフルな方でね、海外生活が長かったから、とても論理的。いま、さまざまな雑誌などでいわれていることは、この方がすでに実践されていたように思いますね」
持ち物の指定席を決めれば、空間は散らからず、捜し物に時間を費やさずにすむ。
朝食で使うバターやジャムはトレイにセットして冷蔵庫へ。
晩ごはんに使う常備菜や瓶詰めなども同様に。
きれいなものは見せる、そうでないものはしまう。
すっかり身についた、暮らしの哲学。
久しぶりにページを開いてみれば、「ああ、元は、ここに書かれていたことだった」と懐かしさでいっぱいになり、けれどそこから少しずつ、自分のスタイルをつくり上げるべく、重ねた時間を思い出していました。
すぐする すぐすむ 快速家事
海外生活の長かった著者による、合理的で美しい暮らしを保つハウツー本。むだなことはせず、最小限の時間と手間で家を心地よく整えるテクニックを、ていねいに伝授する。
原田知津子著 文化出版局
品切れ
〈撮影/kumonmiwa 取材・文/福山雅美〉
坂井より子(さかい・よりこ)
1946年生まれ。神奈川・葉山市在住。自宅で料理教室を30年間、続けたあと、近年では、暮らしの知恵を交えた語りが好評を博し、若いお母さんたちのために、お話しの会を開催。著書に『暮らしをつむぐ』(技術評論社)など。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです