暮らしの場
2021年が始まりました。新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。
今、地球の上で暮らすすべての人が、楽しいと感じる時間を持てる年になるといいですね。
昨年は、コロナ禍の影響でリモートワークも行われ、住む場所について改めて考えた人が多かったのではと思います。
私自身は、2011年の東日本大震災をきっかけに、人口が集中している大都市に住み続けることに疑問を感じるようになりました。
直接の地震の被害が少なくても公共交通機関がストップしてしまい、夜になって黙々と家を目指して国道246号線を歩く人波。
一人一人の構成員の無意識下の絶妙なバランスが、集約的な都会の暮らしを成り立たせているのだなあとその時思いました。
震災をきっかけに暮らし方を見直した人は多かったのではないでしょうか?
その後も7年間、世田谷で店を続けていきましたが、満を持してクローズし、いよいよ移転を決行しました。
自然を感じられる所、家賃などの経費の負担が抑えられる所というのが、今回の新天地探しの二大目標でした。
住むにしても仕事をするにしても、どんな町でも、メリットがあればデメリットもあると思います。
都市部の大きなデメリットはなんと言っても地価の高さ。
2018年まで世田谷区等々力で借りていた40坪の店舗物件、16年間で都心に新築一戸建てが買えるくらいの家賃を払い続けました。
我ながらよくやっていったものです。ほんとうに地価高いです。
一方で、「人口が密集している」=「マーケットが大きい」というのは都心のメリットなのですが、インターネットがインフラとして整備された今の時代、お客さんとの物理的な距離の近さというのは、小売業にとってはそんなに大きなメリットではなくなってきました。
遠方にわざわざ出かけて行くという楽しみもあります。
店をクローズしてから1年弱。希望ぴったりの物件が見つかり、昨年3月より富山県に引っ越し。6月からお店としてオープン、この場所で巣巣活動を再スタートすることができました。
まだ始まったばかりですが、私が感じた田舎暮らしの良いところ、一番初めに声を大にして言いたいことは、自然を感じる暮らしはとても楽しい ということです。
日々の草木の変化。美しい空とアルプスと田園の風景。刻々と変化する流れる雲と太陽の光。
今現在は災害級の大雪になっていますが、雪景色もほんとうに美しい。寒いけども一面銀世界の風景に見惚れてしまいます。
この自然を感じる暮らしの楽しさは、どなたにとっても享受できることだと思います。
では 悪い点は何だろうか と考えてみてもあまり思いつきません。
これは実にありがたいし幸いなことです。
一般的に田舎暮らしは人間関係が大変だと言われますが、そんなこと無いと思います。
おそらく日本中どこでも、都会でも田舎でも、人間関係が大変なところは大変だし、平穏なところは平穏。
田舎が特別に大変なのではなくって、どこも同じではないでしょうか?
見渡してみると、ここ富山でも、多くのご家庭はお子さんが就業や就職をきっかけに外に出られていて、やはり過疎が進んでいます。
そのために、地域の皆さんが移住してきたことをとても喜んでくれました。それだけでも私たちも嬉しい気持ちです。
そもそも東京など都市部に住んでいる人の多くも、地方から移り住んできた人ですよね。親の代から東京生まれという人は本当に少ないと思います。
新しい場所に移り住んで生活を立ち上げたということを、誰しも自分や家族が体験しているのです。
だからこそ、移住してきた私たちを歓迎してくれたのだと思います。
田舎から都会に出た人たちも、戻りたくなったらふるさとに戻ったらいいし、気に入った別の田舎に住んでもいいし、海外で暮らしてもいい。
絶対にその場所に一生いなくても、暮らしにあわせて自由に住みたいところに住み、そこでの暮らしを楽しめたらと思います。
岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
巣巣店主。世田谷区等々力で16年続けた家具と雑貨の店を閉店し、2020年6月富山県立山町で再オープン。New巣巣は雑貨を中心としたお茶も飲めるお店。バンド「草とten shoes」リーダー。
https://www.susu.co.jp/
富山県立山町鋳物師沢201−6
12月中旬から2月末までの間、店舗は冬季休業中。