(『天然生活』2021年9月号掲載)
ストレスの原因とつきあい方
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
今回のテーマは「ストレス」です。核家族が増えて孤立化が進んでいるうえ、同調圧力が強く働く現代は、よくストレス社会だといわれますね。
加えて新型コロナウイルス感染症の流行によって、ふだん以上のストレスがかかっている。新型コロナウイルス感染症がもたらす体への実害や経済的被害以上に大きいと思われるのが、精神的な被害です。
これは、前者2つよりも表れるのに時間差があります。つまりこれから本格的に出てくるものであり、決して軽視できません。
ストレスの内容や程度は、人によってまったく違います。けれど、どんなストレスでも根源はただひとつ。それは「自分がやりたいことができない」ということです。
そう考えると、去年からの「〜してはいけない」というさまざまな抑圧が長く続く状況は、心身に大きな影響を及ぼしかねないと思います。
私の考えでは、どんな場合でも心と体を切り離して考えることはできません。さらにいえば、心は体の上位中枢であり、心はよい方向にも悪い方向にも、体に変化を与えるスイッチのような役割を果たしています。ですから強い精神的ストレスが続くと、体が変調をきたす可能性も十分にあるのです。
では、こうしたストレスにどのように対処すればよいのでしょう。体の面からいうと、やはりふだんから腸内細菌を整える暮らしをすることがなにより大切です。腸内細菌が元気であれば、多少のストレスにも耐えうる体がつくられる。
また、「腸脳相関」という考え方もあるように、精神を下支えしているのが腸内細菌です。ですから旬の食材や発酵食品、食物繊維など、腸内細菌が喜ぶ食事を摂り、自然に沿った暮らしをすることが基本。
また、日光を浴びながら20〜30分散歩するなど、無理のない範囲での有酸素運動もストレス対策にはおすすめです。
ここでもうひとつ、別の視点から考えてみましょう。ストレスは悪いもの、避けるべきものと考えられがちですが、実はそういう側面だけではないのです。
もしもストレスがまったくなくなれば、人間は欲求に制限がかからず暴走するか、怠惰になるかのどちらかになるでしょう。
自分の欲求を「自己軸」、それを抑えようとする社会的ストレスを「他者軸」とすれば、自他を心の中でうまく統合することで、人間はひとまわり成長できるのです。
ストレスとは、自分が成長するチャンスにもなりうる。そう考えると、気持ちが少し楽になるのではないでしょうか。
〈取材・文/嶌 陽子〉
本間真二郎(ほんましんじろう)
小児科医・微生物学者。2001年より3年間、アメリカにてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、大学病院での勤務を経て2009年、栃木県那須烏山市に移住。現在は同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。著書に『病気にならない自然な暮らし』(マキノ出版)など。2児の父。