東京から鹿児島・鹿屋(かのや)に住まいを移した料理研究家・門倉多仁亜(タニア)さん。おだやかに流れる時間のなかで、衣食住、もの、これからの生き方……さまざまなことについて考えます。新しい暮らしを前向きに楽しむタニアさんの、オープンキッチンの工夫についてお届けします。
(『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』より)
家族が使いやすいオープンキッチンの工夫
現在の家はオープンキッチンになっています。散らかっているときには誰からも見えてしまう面もありますが、ドアがついたキッチンにひとりでこもって料理するのは嫌だと思い、あえてオープンスタイルにしました。
料理を作っていると確かに汚れたり、シンクが大変なことになったりもしますが、使えば汚れるのはしょうがないですね。
最近では、魚のウロコ取りなどキッチンが散らかりやすい作業は夫が率先してやってくれるようになりました。大変なときは家族が協力するのは当然のこと。一緒に作れば会話も弾むし楽しいので、オープンキッチンにしてよかったと思っています。
また、来客時に乾杯をするとき、今のキッチンだと料理しながら参加できて、とても嬉しいのです。
ドアの向こうのキッチンでひとり作業をしていて、ダイニングルームからみんなの笑い声が聞こえたりしたら、寂しくなる気がして、ダイニングルームとキッチンを一体にしました。
でも、キッチンはたくさんの食材や道具が集まってくる場所でもあるので、キッチンが見えるということは工夫も必要です。
一番大事なのは収納スペースの確保。キッチンの横に大きなパントリーを作り、ストック品や使っていないキッチン道具はここに保管しています。私は見せる収納よりも隠す収納が好きなので、アイランドキッチンの裏には表からは見えない収納も作りました。
ものが出しっぱなしだと、「片づけなきゃ」と思う自分に疲れてしまうのです。自分が疲れる原因になるものは、なるべく減らすようにしています。
どんな形であれ、忘れてはいけないのは、家はショールームではなく生活の場ということ。他人がどう思おうが、家族が心地よく暮らせる空間であることが大切です。それがどういうものかは、そこに住んでいる家族にしかわかりません。知り合いの建築家の「建築家は想像はするが、家族が時間をかけて考えた工夫にはかなわない」という言葉を思い出します。
家づくりは終わりがないみたいですね。これからも暮らしの中で工夫を重ねながら、使いやすいキッチンを目指していきたいです。
本記事は『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』(扶桑社)からの抜粋です
門倉多仁亜(かどくら・たにあ)
1966年生まれ。ドイツ人の母、日本人の父をもち、ドイツ、日本、アメリカで育つ。国際基督教大学を卒業後、外資系証券会社に入社。東京、ロンドン、香港で勤務する。結婚後、夫の留学のために再びロンドンへ。長年興味のあった料理とお菓子を学ぶために、ル・コルドン・ブルーへ入り、グランディプロムを取得する。帰国後、料理教室をはじめ、現在は鹿児島県鹿屋市在住。雑誌や書籍などで料理やドイツのライフスタイル全般を紹介する仕事をしている。著書に『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』(扶桑社)、『ドイツ式暮らしがシンプルになる習慣』『365日の気づきノート』(ともにSBクリエイティブ)など多数。
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2020年、東京から鹿児島に住まいを移した料理研究家・門倉多仁亜さんの暮らしの日々を綴ったエッセイ集です。鹿児島での生活と新たな習慣、おしゃれと食事のはなし、家族とのつき合い方、コロナ禍で考えたことなど。衣食住にまつわる工夫や、日々の習慣、機嫌よく過ごすための心がけなど、さまざまなテーマで暮らしのヒントをお届けします。 年齢を重ね、環境の変化を前向きに楽しむタニアさんの、ゆとりある、ていねいな暮らしを多数のカラー写真とともに紹介します。