(『天然生活』2017年5月号掲載)
栄養バランスがとりやすい「和食」には、献立づくりのヒントがたっぷり
五味、五法、五色。季節を取り入れてバランスよく
日本料理を学び、その魅力を伝えている長谷川弓子さん。「一汁三菜」が家庭料理の模範とされるように、和食は、もともと栄養バランスがとりやすく、“和食の心”にも、献立づくりのヒントが詰まっているといいます。
「和食は甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の『五味(ごみ)』や、生(切る)、煮る、焼く、揚げる、蒸すの『五法(ごほう)』、白、黒、黄、赤、青(緑)の『五色(ごしき)』を大切にしています。つまり、食卓に五味、五法、五色の料理を並べると、見た目も美しく、自然と栄養バランスが整った献立になるのです」
たとえば、野菜や肉を織り交ぜて五色の食材を使い、主菜が甘辛味の煮ものなら、副菜は酸味を利かせたおひたしにするなど、五つの調理法と五味を意識するだけで、偏りの少ない献立ができ上がります。
濃いめのだしで減塩とおいしさを両立
一方で、和食は味噌汁や漬物、干物などで、塩分が高くなりがち。そこで、減塩とおいしさを両立させるのが、濃く引いただし。
引き方は簡単。昆布を水から入れて火をかけ、沸騰したらかつお節を入れて2〜3分、よく煮出します。このだしを使うことで料理にうま味が加わり、塩分を減らしても満足できる味に。
今回の献立では、味噌汁やけんちん汁、牛丼、親子丼、おひたしなどは、濃厚なだしの効果で、低塩分ながら奥行きのある味わいになりました。ざるそばのつゆも、市販の麺つゆの量を減らし、だしでのばしてまろやかに。和食の要であるだしが、随所で味を支えています。
バランスのよい献立【1日目】
昼 /ざるそばと春野菜の天ぷら
そばはミネラル豊富な健康食品。旬の野菜天で食べごたえも◎。
エネルギー……724kcal
タンパク質……21.7g
脂質……30.1g
炭水化物……88.9g
食物繊維……5.3g
カルシウム……81mg
鉄……3.5mg
塩分……1.2g
*栄養計算は、ひとり分です。
材料(2人分)
● そば | 200g |
● アスパラガス | 60g |
● にんじん | 40g |
● 新じゃがいも | 100g |
● A | |
・卵黄 | 1/4個分 |
・水 | 50mL |
● 小麦粉 | 30g |
● 揚げ油 | 適量 |
● きざみのり | 少々 |
● 麺つゆ、大根おろし | 各適量 |
つくり方
1 アスパラガスは、根元のかたい皮をむき、5~6cm長さに切る。にんじんは皮をむき、5~6cm長さの短冊切りにする。新じゃがいもはよく洗い、皮つきのまま4~5mm幅の輪切りにする。
2 ボウルにAを混ぜ、ふるった小麦粉を加えて、手早く粉を溶く。1の野菜をからませて、180℃の油で揚げる。
3 鍋にたっぷりの熱湯を沸かし、そばを袋の表示時間どおりにゆでる。水にとり、もみ洗いしてざるにあげる。器に盛り、きざみのりを散らす。麺つゆに大根おろしを加え、そばに添える。
※麺つゆを使う場合、ストレートのものでも、だしでのばせば減塩になります。
夜 /牛丼
だしと甘めの味つけ効果で、減塩かつ、うま味あふれる牛丼に。
エネルギー……617kcal
タンパク質……19.1g
脂質……17.9g
炭水化物……87.1g
食物繊維……4.7g
カルシウム……81mg
鉄……3mg
塩分……3.1g
*栄養計算は、ひとり分です。
材料(2人分)
● 牛肉(肩・ももの切り落とし) | 120g |
● 白滝 | 40g |
● 玉ねぎ | 100g |
● 砂糖 | 大さじ1 |
● 酒 | 大さじ3 |
● A | |
・だし 100mL | |
・しょうゆ | 大さじ1弱 |
● ごはん | どんぶり2杯分 |
● わけぎ | 1/2本 |
● 好みで一味とうがらし | 少々 |
つくり方
1 牛肉は食べやすい大きさに切り、さっと熱湯にくぐらせ、霜降りにする。玉ねぎは4~5mm幅に切る。白滝は食べやすい長さに切って、熱湯にさっとくぐらせる。
2 鍋に少量のサラダ油かごま油(分量外)を熱し、1を炒める。
3 砂糖、酒、Aを加えて3~4分煮る。器にごはんを盛り、その上に2を盛り、小口切りにしたわけぎを飾る。好みで一味とうがらしをふる。
〈撮影/川村 隆 スタイリング/竹内万貴 取材・文/熊坂麻美〉
長谷川弓子(はせがわ・ゆみこ)
東京都出身。料理家、栄養士。明治大学卒業後、社会人経験をしたのち、近茶流宗家・柳原一成氏、柳原尚之氏に師事し、日本料理を学ぶ。現在、聖徳大学短期大学部専任講師として、調理実習等を担当する。とくに好きな魚はあじ。「海に囲まれた国に生まれたからには、ぜひ、魚料理に親しんでいただければ」
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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