(『天然生活』2022年3月号掲載)
花粉症の基礎知識と対処法
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
春が待ち遠しい時季になりました。一方、暖かくなると花粉症に悩まされるという人も多いでしょう。
花粉症とは花粉が原因となるアレルギー性疾患、つまりアレルギー性の鼻炎や結膜炎のことを指します。
アレルギー性疾患のある人は、約50年前は1,000人にひとり、70年前は1万人にひとりといわれていました。それがいまでは、2〜3人にひとりという統計があります。
アレルギー性疾患は現代病の代表。なかでも一番増えているのが花粉症なのです。
アレルギー反応は、免疫反応の一種です。免疫とは本来、体にとっての異物を排除するシステムのこと。しかしそれが異常をきたすと、敵ではないはずの花粉や食べ物などを敵とみなして攻撃してしまう。これがアレルギー性疾患です。
自分の細胞を敵とみなして攻撃する「自己免疫疾患」もあり、関節リウマチやバセドウ病などがそれに当たります。
なぜこの50年ほどで花粉症が急増したのでしょう。花粉が大気汚染などの化学物質と組み合わさっていることや、現代人の快適すぎる生活が引き起こす自律神経のアンバランスなども原因です。
もうひとつの大きな原因として、微生物を排除しすぎている現代の環境があると私は考えています。免疫反応が強くなりすぎないようにストッパー=調節つまみとしての役割を担っていたのが、戦前くらいまでほとんどの日本人の体内にいた寄生虫でした。
しかし戦後一斉に駆除されたため、ストッパーの機能が失われ、免疫をコントロールできなくなった。そのため、急激にアレルギー性疾患や自己免疫疾患が発症しやすくなったのです。
もうひとつのストッパーであり、いまや免疫を調整する最後の砦ともいえるのが腸内細菌。そのため、ふだんの生活や食事を通じて腸内細菌を元気にすることが根本的な花粉症対策になります。
とはいえ症状が辛いときはマスクやゴーグル、薬などで対応するとよいでしょう。
自然のお手当てとしては三年番茶での鼻うがい、目がかゆい場合は三年番茶に天日塩を入れた「塩番茶」で目を洗ったり湿布をしたりする方法があります。
ちなみに私はごくたまに花粉症の症状が出るのですが、天日塩でつくられた梅干しを2粒食べると症状が治まります。
花粉症は、一度かかっても体質を改善することによって治すことは可能です。必要に応じて花粉を防御しつつ、腸内細菌を元気にするために日々の生活をこつこつと改善していきましょう。
〈取材・文/嶌 陽子〉
本間真二郎(ほんましんじろう)
小児科医・微生物学者。2001年より3年間、アメリカにてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、大学病院での勤務を経て2009年、栃木県那須烏山市に移住。現在は同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。著書に『新型コロナ ワクチンよりも大切なこと』(講談社ビーシー)など。2児の父。