(『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』より)
「家事」が気持ちよくできるなら、趣味って言ってもいい
趣味って、あるような、ないような。何かあるかしら?
そう考えると、手仕事は趣味と言えるかもしれないですね。何か作ったりすることが好きなんです。
長時間やっていても飽きないし、作っていること自体が楽しくて没頭してしまう。子どもや孫が生まれるたびに布団カバーを作り、私のよそゆきのセーターも昔は全部編んでいました。
これまでにしてきた習い事も、暮らしに関わることがほとんどです。
料理、ハウスキーピング、編み物など、主婦という仕事に役立つこと。
編み物は、近所に住んでいた方が先生をしていたので、みんなでお稽古に行っていました。
娘が赤ちゃんの時ですね。手を動かしても口は空いているから、おしゃべりがはずんで。
今は主人が畑をやっているので、旬の野菜で干し野菜を作ったり、庭の木になった梅で梅干しを漬けたりするのも楽しみです。
けれどもしかしたら、野菜や梅が手近になかったら作っていないかもしれないですね。
こういう田舎の環境で暮らしているから楽しませてもらっているけれど、買ってまではやらないんじゃないかしら。与えられたもので工夫してやるからおもしろいんですよ。
この年齢を迎えてみると、何かひとつに夢中になるよりも、日々の暮らしを居心地よくすることを大切にしたいと感じます。
これは家事全般に言えますが、自分の頭で考えながら工夫して進めていくと、すごく満足感を得られるんですよ。しかも家族のためにもなる。
私はシンクの中に、洗っていないスプーンが1本でも置いてあると嫌なタイプなんです。
だから洗って、拭いて、しまって、流しには何ひとつない状態にしておきたい。
自己満足ですが、それが気持ちよくできるなら、それは趣味って言ってもいいんじゃないかしら。
〈撮影/枦木功 取材・文/片田理恵〉
本記事は『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』(家の光協会)からの抜粋です
坂井より子(さかい・よりこ)
1946年生まれ。2人の子どもの母、3人の孫の祖母で、神奈川県葉山町に3世帯9人で暮らす。子育てが落ち着いた40代後半から15年ほど、自宅で料理教室を主宰。主婦歴50年の経験から生まれた暮らしの知恵、また人生を軽やかに生きるコツなどを独特のやさしい口調で語るその姿が、若い世代を含む幅広い年齢層に支持されている。近著『飾らない。76歳、坂井より子の今をたのしむ生き方』は、これまでの人生を深く綴った初めての本。
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自然体な暮らしと素敵な笑顔で、幅広い世代の女性から支持される坂井より子さん。専業主婦歴50年、「ふつうの主婦」だからこそ伝えられる、日々を前向きに暮らすための生き方、考え方をつづったエッセイです。
子どもたち家族と3世帯で暮らし、9人分の家族の食事を作る日々。その時々で「流れに任せて」「いいとこどり」で生きてきたと語るより子さん。一人の女性として、しなやかに、楽しく生きるヒントがたくさん詰まった1冊です。