(『天然生活』2022年6月号掲載)
よい睡眠をとるために大切なこと
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
この時季、新生活を始めた人もいるでしょう。環境に慣れず、夜なかなか寝つけないということはありませんか? 今回は睡眠の話をしたいと思います。
人間は日中活動し、夜に休息するというリズムで生きています。体の内外で起きるさまざまな変化に対応し、体の状態を一定に保つ機能を「ホメオスタシス」といいます。
ホメオスタシスには自律神経系、ホルモン系、免疫系の3つの系があり、これらはすべて連動しながら、1日の中でリズムをつくって動いています。体の健康を支える土台は規則正しいリズムによってつくられており、睡眠はその大事な構成要素のひとつです。
寝ている間、体では実際にどんなことが起きているのでしょう。ひとつ目は脳の整理です。記憶を整理し、体のリズムも整えます。
また睡眠中は成長ホルモンが多く分泌されます。成長ホルモンは、日中活動している間に傷ついた部分を修復・浄化するほか、免疫の調整をするなど、体のほとんどの機能に関わるものです。
このように私たちは睡眠によって体のメンテナンスを行なっています。睡眠不足が続くとこうした働きが低下し、自然治癒力が弱まってしまうのです。
現代ではストレスや夜でも明るい環境などの原因により、眠れないという人が増えているようです。いわゆる不眠症とは体のリズムがずれてしまい、自分で調節できない状態だといえます。
では、よく眠るためにはどうすればよいか。まず大事なのは毎朝、太陽の光を浴びることです。
人の体内時計は24時間より30分長くなっているため、そのままだと少しずつ後ろにずれてしまいます。朝日を浴びることで体内時計をリセットし、リズムを整えるのです。
逆に夜はなるべく暗い環境で寝ることが大事。明るいと睡眠を維持するメラトニンというホルモンが減少してしまいます。
そのほか、カフェインや砂糖など刺激性のある食べ物は午前中にとるようにする、寝る前の室内は少しずつ暗くしていく、テレビや携帯電話を寝る直前まで見ないなど、睡眠前の工夫も必要です。
睡眠薬は依存性がとても高いので、安易に使わないように気をつけましょう。
理想の睡眠時間については個人差があり一概にはいえません。次の日に疲れが残らず、日中元気に活動できることが質、量ともにいい睡眠の目安です。
いい睡眠をとるには昼間よく活動することも大事。よく動いてよく休む、メリハリのある生活が一番の基本なのです。
〈取材・文/嶌 陽子〉
本間真二郎(ほんましんじろう)
小児科医・微生物学者。2001年より3年間、アメリカにてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、大学病院での勤務を経て2009年、栃木県那須烏山市に移住。現在は同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。著書に『新型コロナ ワクチンよりも大切なこと』(講談社ビーシー)など。2児の父。