(『天然生活』2020年12月号掲載)
伊藤千桃さんの冬支度
土地に根ざした冬の暮らしに、小さな楽しみをちりばめて
ゆっくりと秋が訪れる三浦半島の中部、自然に囲まれた神奈川県葉山町。この地で、伊藤千桃さんが切り盛りしている宅配レストラン「桃花源」にも、彼岸花が秋の到来を告げていました。
「毎年、離れの古民家の周りが彼岸花で赤く染まると、少しずつ冬支度を始めます。秋は、空気が清々しいので、体を動かすのが気持ちいいですね。庭の落ち葉を掃除し、裏山でストーブ用の薪を拾っていると、ぽかぽかと身体が温まります。落ち葉焚きでの焼き芋も、これからの季節の楽しみです」
一年を通して、「収穫を兼ねた庭仕事」が伊藤さんの朝の日課。夜明けとともに目覚め、実った果実や野菜を摘み取ります。娘さんとお孫さん、愛犬、愛猫と住まう母屋のダイニングテーブルの上には、採ったばかりの立派なレモンが山のように盛られていました。
「今年はレモンが大豊作。昨年は実らず諦めかけていたけれど、しっかり手入れした甲斐があったわ」とうれしそうに微笑み、香り豊かな自家製のホットレモネードをふるまってくれました。
多忙な伊藤さんのバイタリティを支えているのは日々の食事。
「私は、食べないと動けないの。朝ごはんは2回、昼、夜、おやつと、とにかくよく食べます。肌寒くなると鶏のスープが恋しくなりますね。行きつけの葉山のお店で鶏一羽買ってまるごと煮込んだもので、スープをごはんにかけてもおいしいですよ。
昨日は直売所でりんごが安く手に入ったので、アップルパイも焼きました。これからの季節は、温かいものがおいしく、体に染みますね」
伊藤千桃さんの冬支度
鶏まるごとスープで体を芯から温める
鶏一羽をまるごと煮込んだスープは伊藤家の冬の定番料理。
「湯を張った土鍋に丸鶏に八角とねぎ、しょうが、にんにく、山椒の実、冷蔵庫の余り野菜を入れて、1時間ほど、コトコトと中火にかけます。味付けはお塩だけ。小ぶりな鶏のほうが、味が濃く、お肉もやわらかくておいしいの。朝、火にかけてお昼ごはんにすることが多いですね。私はたくさん食べるので、いつもペロリと平らげます」
伊藤千桃さんの冬支度
真っ赤なクロスでテーブルまわりを模様替え
廃業した茅葺の饅頭屋を移築した離れで、来客をおもてなし。
「秋になるとぬくもりのある布を少しずつ出して、模様替えを考えるのが楽しみ。冬は赤いクロスが活躍します。黒や朱塗りの漆器と合わせやすく、ゲストのテーブルセッティングに使うと評判がいいんです」。真っ赤なクロスにツワブキのグリーンが映える冬らしい色合わせ。漆器好きな伊藤さんならではの、和洋折衷なコーディネート。
伊藤千桃さんの冬支度
孫がベテラン。焼きいもの楽しみ
ホームセンターで購入した薪ストーブで落ち葉焚き。全体に火が回ったら、アルミホイルで包んださつまいもを灰の中へ投入すると、1時間ほどでほくほくの焼きいもに。
「このストーブ、3,000円くらいだったの。軽くて持ち運べるし、どこでも使えて重宝しています。冬は親族の誕生日が集中しているので毎月の誕生会でも活躍。火をおこすのが一番上手なのが孫なの」
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〈撮影/大森忠明 取材・文/坂口みずき〉
伊藤千桃(いとう・ちもも)
1972年度ミス日本で元女優。自宅で「桃花源」を営み、庭で採れる地野菜を使った宅配レストランが人気に。著書に『千桃流・暮らしの知恵』(主婦の友社)。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです