(『天然生活』2021年1月号掲載)
私の“好き”なもの、編み物
編みかけのニットも道具も手に取りやすく、ざっくりと
ニットデザイナーの三國万里子さんが編み物と出合ったのは、3歳のとき。祖母に遊び道具として毛糸と編み針を渡されたことがきっかけでした。小学校4、5年生のころには、クロバーの編み針セットをプレゼントされ、さらに夢中になったといいます。
「妹(料理家のなかしましほさん)は外遊びをよくしていましたが、私は家の中で読書や編み物、ピアノの練習などをしているほうが好きでした。大学卒業後、秋田の山奥の宿で住み込みのアルバイトをしていたときも、先輩から『万里子の部屋には本と編み物の道具しかない』といわれたくらい、好きなことが変わらないんです」
子育てしながら作家活動をしていたときも、すき間時間を見つけては編んでいました。
「いまは5時間くらい編みつづけることもありますが、子どもが小さいときはまとまった時間が取れずちょこちょこと。そういうちょっとした時間に何をするかで、その人の1年って決まる気がします」
現在はデザイナーとして、デザインを考えながら常時2種類くらい並行して編んでいます。編みかけのものは大小のあけびのかごに入れ、リビング壁面の本棚に。
編み針はペン立てのようなツールスタンドに入れ、かごの横に置いています。自身がデザイナーを務めるMiknits(ミクニッツ)のオリジナル商品で、編み針柄。長い編み針を入れてもバランスが崩れにくく、仕切りが付いていて、整理しやすくなっています。
「だいたい何号か、見ればわかるのでスタンドにざっくり入れています。消耗品なので針先がへたってきたら買い換えますが、メーカーにこだわりはなく、針先の尖ったものが編みやすいです」
編み物をするのは、家事と運動を済ませてから。長く編んでいると言葉に飢えるそうで、ラジオや音楽を聴いたり、映画を流し見したりしながら編んでいます。
「自分にとって編み物は、旅や冒険に似ています。知らない記憶が呼び起こされるような、“きれい”というひと言では言い表せない、見たことがないものをつくりたい。幸運にもそういうものができ上がったら、皆さんの心にも届くのではないかと思っています」
お気に入りの“好き“なもの
ストレッチポール
凝りをケアするストレッチポール。
「床に置いて寝そべり、ゆらゆら体を揺らして、ほぐします」
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〈撮影/中垣美沙 取材・文/長谷川未緒〉
三國万里子(みくに・まりこ)
ニットデザイナー。キットやプロダクト等のデザインを行う。近著は『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』(新潮社)
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです