(『天然生活』2021年1月号掲載)
キムチで食卓がぐっと豊かに
キムジャン(キムチづくり)は、韓国の国民的行事。発酵に最適な気候を知らせる “キムチ前線” が新聞に載るほどです。
発酵食品であるキムチは、ビタミン、乳酸菌、食物繊維など栄養素が豊富。厳しい冬を乗り越えるための知恵が詰まっています。
「キムジャンは、済州島で母に教わりました。キムチは地方によって材料が違いますし、家庭それぞれに伝わる味があるんです」
塩漬けした白菜にキムチヤンニョムを塗り込みながら話す、李映林さん。
長年続けてきた保存食づくりのなかでも、やはりキムチは格別。秋が深まると、今年もキムチを漬けられることがうれしく、わくわくとするのだそうです。
「自家製キムチのいいところは、毎日変化する味を楽しめること。私は、漬けたての若い味をサラダのように食べるのも好きです」
漬けたてのキムチは、食感がパリパリとして辛みや酸味もマイルド。2~3日たつと熟成が進み、うま味や一体感が増してきます。
2週間ほどおいたキムチは乳酸菌の働きで酸味が出るので、鍋料理や炒めものに。ひとつの白菜から幾種類もの味わいが得られます。
滋味あふれる食材の力強さと、自然が生み出した発酵という働き。ふたつが出合って生まれる手づくりキムチは、晩秋の食卓を美しく、豊かに彩ってくれるのです。
キムジャンの日の、シンプルな食べ方
キムチができ上がったら、「豚肉のポッサム」をつくることが多いそう。
たっぷりの葉野菜に、ゆでて薄切りにした豚バラのかたまり肉、白菜キムチ、黒豆ごはんなどを包んでいただきます。
添えたたれは「ニラジャン」。キムチヤンニョムに刻んだニラやパプリカ、しょうゆ、黒酢を加えた辛くて酸っぱい味が、豚肉とよく合います
白菜キムチ(1/2株)をつくりましょう
キムチづくりに挑戦するなら、まずは定番の白菜キムチから。
このキムチヤンニョムは、多めにつくっておくと料理にも活用できます。
材料(つくりやすい分量)
● 白菜 | 1/2株 |
● 粗塩 | 白菜の重量の5% |
● キムチヤンニョム | |
・煮干し(内臓を取り除く) | 30g |
・昆布 | 10cm |
・もち粉(または白玉粉) | 大さじ1 |
・はちみつ | 大さじ1 |
・粉とうがらし | 100g |
・A | |
. あみの塩辛 | 60g |
. りんごのすりおろし | 1/2個分 |
. おろしにんにく | 2片分 |
. おろししょうが | 20g |
. 白炒りごま | 大さじ1 |
● 大根 | 150g |
● にんじん | 30g |
● 細ねぎ | 1/3束 |
● せりまたは三つ葉 | 1/2束 |
● 塩 | 小さじ1 |
つくり方
◉ 白菜の塩漬け
1 白菜は根元の固い部分に切り込みを入れて、手でふたつに裂く。
2 根元の固い部分を三角形に切り落とす。
3 2は、切り目を下にして盆ざるにのせて天日で3~4時間干す。
4 水で洗い、外側の葉から1枚ずつ粗塩をふる。芯の固い部分には強めに、葉のやわらかい部分には弱めに塩をふり、手のひらで押さえてなじませる。
5 漬物用容器などに白菜の葉と根元が交互になるように重ねて入れる。4のバットに残った粗塩に水少々を入れて溶き混ぜ、白菜の上から回しかける。
6 ラップをかけ、重しをして7~8時間おく。途中、白菜から出た水分が白菜の半分ほどの高さまで上がってきたら白菜の上下を返す。
7 白菜がかぶるくらいに水が上がり、十分にしんなりしたら水で洗う。味をみて塩辛いようならばもう一度洗う。白菜を容器のふちにかけ、1~2時間おいて自然に水気をきる。
◉ キムチヤンニョムをつくる
8 鍋に煮干し、昆布、水2カップ(分量外)を入れて1時間ほどおき、中火にかける。煮立ったら昆布を取り出して、あくを除き、弱めの中火で10分ほど煮る。
9 8をこし、煮汁を鍋に戻して弱火にかける。もち粉を、だし汁大さじ2でといて、混ぜながら加えて煮る。とろみが出て、ふつふつ煮たってきたら火を止め、はちみつを加えて冷ます。
10 Aのあみの塩辛を、包丁でたたく。ボウルに粉とうがらしを入れ、9を加えて混ぜ、Aを加えて混ぜ合わせる。
◉ 本漬け
11 細ねぎとせりは3cm長さに切り、大根とにんじんは4~5cm長さのせん切りにする。ボウルに大根とにんじんを入れ塩をふり混ぜ、しばらくおいて水分が出たら軽く水けをしぼる。キムチヤンニョムに大根、にんじんを入れて混ぜ、細ねぎとせりも加えて混ぜ合わせる。
12 白菜の葉を1枚ずつ広げ、根元から葉に向かって11をまんべんなくていねいに塗る。
13 一番外側の葉を残し、中の葉を丸め、残した外側の葉で丸めた葉を包み込む。
14 閉じ目を下にして、保存容器に空気が入らないように隙間なく詰める。表面をラップで覆ってふたをする。
でき上がり
* * *
李映林(り・えいりん)
韓国・済州島出身。娘のコウ静子、息子のコウケンテツとともに料理家として活躍。素材を生かしたやさしい韓国料理をベースに、幅広い料理を提案している。著所に『李映林、季節の仕込みもの』(グラフィック社)など多数。
〈料理/李 映林 撮影/在本彌生 取材・文/河合知子〉
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです