(『天然生活』2020年7月号掲載)
梅雨の不調の原因
じめじめ、湿度の高い気候が胃腸の不調を引き起こす
「梅雨の時季は、いかに自分の体の中に『湿邪(しつじゃ)』をためないかがポイントです」と語るのは、国際中医薬膳師の瀬戸佳子先生。
中医学では「邪気(じゃき)」と呼ばれる悪い「気」が不調を引き起こすと考えますが、とくに梅雨時に気をつけたいのはこの湿邪。
外に湿気が多いと、体の中も流れがせき止められた水たまりのような状態になり、それが胃腸を弱らせて栄養の吸収も滞り、結果的に元気がなくなっていくのです。
この時季は体の水はけをよくして、胃腸をケアすることがとても大事なのです。
梅雨の養生法
「湿邪」に弱い胃腸の負担を減らすとともに、夏を乗り切れる体づくりをしていきましょう。梅雨をいかに元気に乗り切るかが、次の季節を快適に過ごすための鍵となります。
胃腸に湿気をためないために食事で控える5つのもの
中医学で「脾(ひ)」と呼ばれる消化器関係は、邪気のなかでもとくに「湿邪」が苦手。胃腸に湿気をためがちなのは、以下の5つのものが考えられます。
「梅雨でも気温が上がった日は、つい冷奴やスイカなど、冷たいものや生ものが食べたくなるときがあります。けれど『まだその時季じゃない』と、ぐっとガマン」
湿気が多いと汗もかきにくいので、なおさら体に「湿」をためないよう、食べるものや食べ方に気を配ることが大切です。
1.冷たいもの
氷が入った飲み物やキンキンに冷えたデザート、冷蔵庫から出してすぐの食材など。常温より温度が低いものは胃腸の負担を増やすと意識して。
2.甘いもの
砂糖を使ったアイスクリームやお菓子類だけでなく、果糖が含まれる果物類も実は「湿」をためやすい素材。湿度の高い梅雨時は、注意を。
3.生もの
生野菜のサラダ、刺し身、冷奴など。「そもそも伝統的な和食には生ものはほとんどない。火を入れることで胃腸の負担が下がり、消化もラクに」
4.油っぽいもの
揚げものや油の多い炒めもの、バターや生クリームなどの乳製品。「バターは『体を潤す』ときに使う食材。湿邪が多い時季は負担になります」
5.味の濃いもの
「中医学では味の濃いものは、痰湿(たんしつ:体の水分がよどんでたまった、病気のもと)の原因となると考えます」。薬味などを上手に使い、薄味で。
汗をかける体をつくる
汗をかくことには、余分な水分を外に出すだけでなく、体温調節という大事な役割があります。つまり、汗をかけるようになる=暑さに耐性ができるということ。
「手軽で効率的なのが、足浴やひじ浴などの部分浴。むくむのは結局、血流が悪いことが原因なので、散歩やストレッチなどで体を動かすことも基本です。
蒸し暑い気候の東南アジア料理にもよく登場する、カレーパウダーやとうがらしなど血流をよくしてくれるスパイス類を活用するのもおすすめですよ」
雨にぬれた服や靴下はすぐ着替える
「湿気の多い環境は汗もかきづらく、それだけで体の負担になっているということを意識しましょう。通勤・通学で服や靴がぬれそうなら、予備を持っていき、汗をかいたらこまめに着替えて、洗髪後もしっかりドライヤーで乾かしましょう」
なかなか晴れ間が出ないので難しいですが、部屋の中の湿度を上げてしまう室内干しも最小限に。梅雨時に体調をくずし気味だと自覚がある人はとくに、乾燥機や除湿機といった文明の利器も積極的に活用して。
〈監修/瀬戸佳子 イラスト/カトウミナエ 取材・文/田中のり子〉
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教えてくれた人
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師、登録販売者。東京・青山にある源保堂鍼灸院・薬膳部にて「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案ほか、漢方相談も行っている。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです