(『天然生活』2020年8月号掲載)
手を動かしてものを生かす、楽しく創造的な時間
数々のエッセイで、独創的な工夫をちりばめた暮らしの楽しみを紹介してきた山本さん。
家が好きで、ひとりが好き。ステイホーム期間も生活は変わらず、むしろ「本領発揮」とばかりに仕事と家事をこなし、洋服のボタンを付け替えたり靴下を繕ったり、あるいは手紙を書いたり。
家でひとり、手を動かす幸せを確認した日々でした。
「家のことは何でも好きだけど、手仕事と手紙書きは格別です。集中して時間をささげていると、縮こまった神経が伸びて解放されます。そうして、達成感が大きい!」
孤独を大切にする自分でありたい
「まめまめしく手を動かし、暮らしの気になることに解決をつけていく作業は、楽しくて創造的で、とても気に入っています」
ひとりが好きで居職の道を選んだ山本さんにとって、手仕事と同じ値打ちを持つのが、「孤独」です。
ひとりでいる時間がいかに価値のあるものか。アメリカの詩人で小説家のメイ・サートンの著作と出合い、それを知った20代のときから、孤独を大切にする自分でありたいと、常々思ってきました。
「私はひとりが基本なので、そこが保たれないと、人との仕事も家族との生活もうまくいかない気がしています。この先ばあちゃんになっても、私を支えてくれるのは手仕事と孤独です。ちゃんと仲良くしていきたいと思っています」
山本ふみこさんの家で楽しむ工夫
まめまめしく手紙を書く
元来の手紙好き。最近は通信のエッセイ教室の生徒さんとのやり取りもあり、手紙を書かない日はない山本さん。
「もらうのもうれしいけど書く方が好き。本当に集中しないとできない、創造的な仕事だと思います。切手を買いに行くのも楽しいし、もらった手紙の使用済み切手は『日本キリスト教海外医療協力会』に寄付して国際保健医療の活動費に。いろいろつながる意味でも手紙は奥深いです」
山本ふみこさんの家で楽しむ工夫
雑誌や包装紙で封筒づくり
手紙関連の道具はほとんどが手づくりや再利用のオリジナル。封筒は雑誌や新聞、包装紙、使い終わったカレンダーなどを使ってこしらえます。
「市販の封筒を開いて型紙をつくっておくと便利です。絵柄の配置とか思わぬ仕上がりになったりして楽しいものです。なかなか人と会えなくなってからは、封筒に紅茶のティーバッグを入れて『一緒にお茶する気持ちで送りました』と、手紙を出しています」
〈撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美〉
山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
随筆家。暮らしまわり、生活と社会を見つめる多くのエッセイを執筆。「ふみ虫舎通信エッセイ講座」主宰。『家のしごと』(ミシマ社)など著書多数。
インスタグラム:@y_fumimushi
ブログ:https://www.fumimushi.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです