(『天然生活』2020年3月号掲載)
明日のためにやっておく夜のコトコト。中川たまさんの冬の夜長仕事
ストーブの上でいんげん豆を煮る
豆を煮るのは、夜長仕事にぴったり。この時季、たまさんは大豆や小豆、ひよこ豆など、さまざまな豆をゆでてストックしておくことが多いのだとか。
「とくに白いんげん豆はスープやサラダ、つけ合わせなど、さまざまな料理に使えて重宝します」
香りと風味付けにローズマリーを一枝加えて。アラジンのストーブに載せれば火加減の調整も要らず、じっくり、ゆっくり火をとおすことができる。
チャイミックスをつくっておく
自家製のチャイミックスも、この季節のお楽しみ。ルイボスティーの茶葉にシナモンスティックを折って加え、ホールのカルダモン、ジンジャーパウダーを加えて混ぜるだけ。
チャイのつくり方は、小鍋にチャイミックスと水を入れて中火にかけ、沸いたら5分ほど煮出し、牛乳と砂糖を加えて沸騰直前まで温めたら茶こしでこしてカップに注ぐ。スパイスが効いて、じんわりと体が温まる。
夫のお弁当を夜につくっておく
夫のお弁当を長年つくっているたまさん。近年は娘さんの分が不要になったため、冬なら前の日に用意することが多いそう。
「バットにおかずを並べてラップをかけておきます。炊飯器をセットしておけば、朝、夫が自分でお弁当箱に詰めます」
この日は、ぶりの甘酢焼き、玉子焼き、きんぴら、青菜のゆでたものを用意。ぶりは酢の効果でさっぱりとして、ぶりの脂との相性がよい。
明日の自分のために、夜に手を動かして
部屋をじんわりと温める灯油ストーブの上に厚手の鍋を置いて。中身はふっくらと煮えた白いんげん豆。ローズマリーの香りがふわりと立ち上がります。
「ストーブの上だと火加減を気にしなくていいから楽ちんなんです。甘く煮ることもありますが、これは料理に使います。そのまま食べてもおいしいんですよ」
料理家の中川たまさんに夜時間について伺うと「最近は夫も娘も帰りが遅いので、夕食はひとりで先に食べることも多くて。そのあとはゆっくり家事をすることが多いですね」とのこと。
翌日の夫のお弁当づくりや、朝ごはん用のスープづくり、同じく朝にスープと一緒に食べる蒸しパンの下ごしらえなど、お仕事柄もあり、台所仕事が多く挙げられました。
「娘が高校生までは朝も早かったけれど、いまは大学に通っているので、すっかり朝が遅くなって。私も朝はできるだけ寝ていたいから、夜のうちにいろいろ済ませてしまうことが多いんです」
いまの時季はとくに起きられなくて、と笑う、たまさん。朝は冷えるこの季節、温かいスープや湯気の上がる蒸しパンを朝ごはんに食べられるとあれば、夜の仕事にも精が出るというわけです。
「粉もののお菓子は計量が面倒なので、朝や時間がないときはおっくうに感じてしまいがちですよね。前の晩に前もって粉や油などを用意しておき、朝、順番に混ぜて蒸すだけなので本当に簡単なんです。粉類も事前にふるっておけば、あわてることもありません」
こんなふうに、“前もってやっておく”のは朝ごはんの用意だけではありません。
「冬はチャイをよく飲むのですが、そのつどスパイスを合わせるのが手間なので、まとめてチャイミックスをつくっています。寒い夜に“温まりたいな”と思い立ったら、すぐに飲めるのがいいんです」
カフェインが体質的に苦手だというたまさんは、ルイボスティーに数種のスパイスを組み合わせて。好きな茶葉を選んでスパイスの量を調整できるのも手づくりならではといいます。
〈撮影/砂原 文 取材・文/結城 歩〉
中川たま(なかがわ・たま)
四季折々の食材を使った料理や保存食を提案。暮らしぶりやもの選びにも定評がある。著書に『いも くり なんきん、ときどきあんこ』(文化出版局)など。
インスタグラム:@tamanakagawa
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです