(『天然生活』2022年12月号掲載)
健康寿命を延ばすには、日頃の運動が大切
日本人の「平均寿命」と「健康寿命」(※1)の差は男性で約9年、女性にいたっては約12年もあります(※2)。
リハビリテーション治療の第一人者で、数多くの寝たきり予防法を提唱する安保雅博先生は、「認知症や寝たきりになるのを防ぎ、健康寿命を延ばすには、日頃の運動が何よりも大切。体を動かさないと筋力が低下し、骨量も減少してスカスカに。運動不足は高血圧・喫煙・糖尿病と同じくらい病気の危険因子でもあります。いまのうちから運動の習慣化を心がけてください」と語ります。
運動への苦手意識がある人でも、自宅で簡単に行えるのが、家でできるストレッチと筋肉のトレーニング「家トレ」です。家事をしながらテレビを見ながらなど、「ながら」でできるものも多いので、すき間時間を利用してみましょう。
最低週3回を目標に、とにかく続けること
「家トレ」を行うポイントはいくつかありますが、まずは毎日、最低でも週3回行い、「続ける」ことを目標に。どの運動も簡単なものばかりですが、自分にとってハードルが高ければ無理をせず、慣れたら回数や時間を増やすのでもいいでしょう。
ただし、「運動は質が大切。無理のない範囲でちょっときついなと思うくらいで効果が生まれます。また、反動で体を動かすと筋肉を傷めるので厳禁です。筋肉の伸びを感じられるようにゆっくりと行うようにします」
トレーニング中は、息を止めずに呼吸を続けることが大切です。筋肉を伸ばすときに息を吐くことを意識すると、自然と呼吸ができます。安全にトレーニングをするためにも、足元ははだしか滑り止めのある靴下で。
運動の前後にコップ1杯(200mL)の水分をとり、脱水症状にも注意します。
さっそく次から紹介する「家トレ」で健康な体づくりを始めてみましょう。
【トレーニングの基本】
●週3回、2週間以上続ける
●正しいフォームで 質の高いトレーニングを
【ストレッチのポイント】
●ひとつの動作に3分かける
●回す、ねじる、伸ばすを意識する
【筋トレのポイント】
●負荷をかけている状態を3~5秒続ける
※1 健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のこと。介護などを必要とせずに過ごせる期間を指す。
※2 厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」より
脚と股関節のトレーニング
いつまでも元気で健康な体でいるためには、足腰をしっかり鍛えておくことがポイント。日常で簡単にできる脚の筋力強化と、立つ・座る・歩くという基本動作の要、股関節の柔軟性を高めます。
ストレッチ
股関節を回しながら足踏み
股関節の柔軟性を高めて、可動域を広げることで、強い足腰に。インナーマッスルも鍛えます。
1 背筋を伸ばしまっすぐ立つ。股関節を内側から外側にできるだけ大きく回しながら、左右交互に足踏みをする。左右各10回。
2 股関節を外側から内側に反対に回すようにしながら、左右交互に足踏みをする。左右各10回。
ストレッチ
股関節のストレッチ
相撲取りが立合の前に行う「蹲踞(そんきょ)」のポーズ。股関節の可動域を広げます。
1 壁の近くに背筋を伸ばして立つ。かかとをこぶしひとつ分開き、つま先をやや外側(30〜45度)に。
2 背筋を伸ばしたままひざを外側に向けて腰をゆっくり落としながら、つま先立ちで5~10秒キープ。
3 1、2を10回繰り返す。
筋トレ
かかとを上下させながら歩く
かかとを浮かせ、上下にはずみをつけて歩き、ふくらはぎを鍛えます。
1 かかとを浮かせてつま先に重心を置く。かかとを上下させながら、体がバウンドするように歩く。かかとが床につかないように注意する。
2 1を1分間行う。
3 立ったまま、かかとを浮かせて上下に動かすのでもよい。その場合も、かかとは床につけない。
筋トレ
足首をクロスして力を入れる
足首を押し合うことでふくらはぎを鍛え、脚力をアップします。
1 椅子に座り、背筋を伸ばし、足首を前後にクロスする。
2 前後の足首を押し合うように力をぎゅっと入れて、5秒間キープする。
3 足の前後を入れ替えて、同様に行う。
4 左右10回繰り返す。
* * *
<監修/安保雅博 取材・文/工藤千秋 イラスト/德丸ゆう>
安保雅博(あぼ・まさひろ)
東京慈恵会医科大学附属病院副院長、リハビリテーション科診療部長・主任教授。リハビリテーション治療のパイオニア。東京都指定の地域リハビリテーション支援センターで出前講座を80回以上開催し、多くの高齢者に「寝たきり予防法」を伝える。『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい!』(中山恭秀共著)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです