親が毎日をより快適に過ごせるよう、いまから少しずつでも始めたい実家の片づけ。経験者でもあるOURHOME主宰のEmiさんに、親子で一緒に気持ちよく取り組むための実践法を聞いてみました。
(『天然生活』2022年9月号掲載)
プラスの言葉で寄り添う、Emiさんの実家の片づけ実践法
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
常に前向きな言葉と態度を忘れずに。両親と一緒に取り組んだ片づけの一部を見せてもらいました。
【実践 1】 小さな場所から始める
⇒ 達成感が得られ、やる気がアップ
最初から大がかりな片づけに挑戦すると、途中で挫折してやる気をなくしてしまうことも。
「玄関や洗面所などの小さなスペース、もしくは引き出し1個から始めてみると短時間で成果が見られ、親も達成感が得やすいようです」
これが次のステップに向かう原動力に。
■引き出し
プラスの言葉
10分だけやれば、引き出し1個きれいになるよ
リビングの引き出しを父親と整理。一度中身を全部出し、必要なものだけ戻す。
「整理する感覚をつかむのにもちょうどいいです」
■玄関
プラスの言葉
ウォーキングシューズが取り出しやすくなるよ
高い位置にもしまっていた靴を整理し、よく使う靴を取り出しやすい下の棚に収納。「玄関は両親とも使う場所なので、コミュニケーションを取りながら片づける最初の場所としてもぴったりでした」
毎日通るので、きれいになると満足度も大。
【実践 2】 ごみ箱の分別ルールを決める
⇒ 父や自分たちもわかりやすく
優先して手をつけたいのは、毎日使うもの。母親だけが把握していたごみ箱の分別ルールを父親はもちろん、遊びに来たEmiさんや弟の家族みんながわかるようにしました。
「家族のだれもが片づけや家事に参加しやすくなり、その分、母の負担も減ることに」
プラスの言葉
わかりやすくすれば、お母さんが楽になるよ
だれもがすぐにごみを捨てられるように、ごみ箱にラベルを貼って。
替えのごみ袋はすぐ上の引き出しに収納し、交換を楽に。
【実践 3】 毎日飲む薬に定位置をつくる
⇒ 置きっぱなしがなくなった
プラスの言葉
飲み忘れや飲み間違いがなくなるよ
「両親が毎日飲む薬があちこちに置きっぱなしになっていたのを整理し、定位置を決めることを提案。薬を探す手間がなくなりました」
飲み残しの薬が多く判断ができない場合、薬局で薬剤師が期限のチェックや整理をしてくれることもあるので、相談してみるのも手。
【実践 4】 手書きのラベルを用意
⇒ 親が継続できるようになった
プラスの言葉
どこに何が入っているか覚えなくてすむよ
台所や洗面所など、こまごまとしたものをしまっている場所では、収納にラベルを貼るとどこに何があるかがすぐわかります。
「電動のラベルライターだと親は継続できないので、手書きにしました」
中身が変わったらすぐに貼り替えられるよう、白紙のラベルも常備。
【実践 5】 掃除機を見えるところに配置
⇒ 毎日の家事を助ける仕組みに
「実家では以前、コード付きの掃除機を使っていたのですが、より掃除が楽になるコードレス掃除機を提案し、置き場所も一緒に考えました」
よく通る場所の壁にフックを取り付けて引っ掛けることで見やすく、出し入れが楽に。父親も家事に参加しやすくなります。
プラスの言葉
お父さんにも掃除してもらえるよ
両親がよく通るスペースの壁に小さなフックを取り付け、ほかの掃除道具と一緒にコードレス掃除機を吊るすように。
「壁に穴を開けるのに抵抗のあった父もとても小さい穴だと説明したら納得してくれました」
【実践 6】 一緒に写真整理をする
⇒ 親子のコミュニケーションの時間にも
親の世代は紙焼き写真が主流。大量の写真をダンボールに入れっぱなしという人も多いようです。
「どうせ整理するなら孫も交えて家族で一緒に進めたところ、話も弾んで楽しい時間に」
整理してアルバムにまとめると、その後も家族みんなで見返して楽しめます。
プラスの言葉
もっとみんなで頻繁に見返せるかたちにしよう
写真が大量にあったので、まずは全部を一カ所にまとめてから「父」「母」「夫婦」「娘」など、人別に仕分けし、そこから要不要に分けていくことに。
いつ中断してもいいよう、それぞれに袋を用意しておくと楽。
【実践 7】 きれいな状態の家の写真を撮る
⇒ この状態をキープしたいと思う
片づけて一度はきれいになっても、生活しているとどうしても散らかってきてしまうもの。
「そんなときのために、母はきれいな状態の台所の写真を壁に飾っています。見ると、そのときのすっきりした心地よさを思い出して再び片づけようという気になるようです」
【実践 8】 孫からの手紙で応援
⇒ 整理の実行の後押しになった
ときには親がなかなか腰を上げないことも。
そこでEmiさんの子どもが「きれいなお家に遊びに行きたいな」「『いる・いらん』をがんばってね」などの手紙を送ったところ、「その手紙を壁に貼って、がんばってくれました」。
ときには孫の力を借りるのも手です。
失敗から学ぶ、親への寄り添い方
できないことではなく、できていることを伝える
数年前、母親が交通事故で入院したために、急きょ父親ひとりで生活することに。1週間後にEmiさんが実家を訪れた際、思わず「ほこりがたまっているから掃除してあげるね」といったらムッとしてしまったそう。
「よかれと思っていったのですが、父にしてみればがんばってひとりで生活したのに、責められているような気持ちになったのでしょうね。以来、できなかったことではなく、できていることを伝えるように意識。そのほうが親も私も気持ちよいと実感しています」
提案するよりも先に親の気持ちに共感する
「私の母は年齢とともに耳が聞こえづらくなってきたのですが、そのことに対して私がすぐに解決策を提案したことで気持ちを傷つけてしまいました。母としてはまだその事実を完全に受け止めきれておらず、心の準備ができていなかったんです」
まずは親の気持ちにじっくり共感し、そこから一緒にステップアップしていくことが大事だと痛感。
「今後も両親にさまざまな変化が起きるかもしれませんが、まずは親が抱える大変さに寄り添うことが大切だと肝に銘じています」
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<撮影/仲尾知泰 取材・文/嶌 陽子 イラスト/ヤマグチカヨ>
写真協力:『親に寄り添う、実家のちょうどいい片づけ』(白夜書房)
Emi(えみ)
整理収納アドバイザー、「OURHOME」主宰。「家族の“ちょうどいい”暮らし」をコンセプトに、ものづくり、執筆、企業との共同開発やレッスン運営などで活動中。著書は『親に寄り添う、実家のちょうどいい片づけ』(白夜書房)など計18冊。インスタグラム@emi.ourhome
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです