(『天然生活』2022年4月号掲載)
自分にとって過剰なものを見極める力を取り戻す
「インドの伝統医学、アーユルヴェーダの特徴は身近なものでできること。性別や年齢、宗教問わずだれもができるのも魅力です」
そう語る池田早紀さん。今回教えてくれた方法を見る前に、まずは基本となる考え方のおさらいです。アーユルヴェーダでは人の体質を見る際、「ドーシャ」と呼ばれる体内のエネルギーのバランスを考えます。
「ヴァータ(風)」「ピッタ(火)」「カファ(水)」の3つのタイプに分けられ、どれが多いかによって体質の傾向が違ってきます。さらに季節によっても強くなるエネルギーは変わります。いずれのエネルギーも増えすぎると不調につながるため、日々の暮らしや食生活を通じて調整することが大事なのです。
「そもそも太るというのはカファの性質。しかも晩冬はカファの性質が強くなる季節です。そこへさらに年末年始の暴飲暴食が重なり、体が重くなりがち。そのため、カファを減らすことが対策の1つ目の軸になります。食事や飲みもの、生活習慣やマッサージなどを通じてカファと反対のドーシャを取り入れてバランスを整えるのです」
2つ目の軸は、消化力を上げること。白湯、生のしょうが、スパイスを使った胃腸薬などを用いて体内に入れたものをため込まず消化できるようにします。そして最後の軸は精神を整えること。
「体のみでなく心も扱うのがアーユルヴェーダの考え方。心身ともに自然で満たされた状態になることで、本来の自分にとっての適量がわかり、過剰なものを不快と思うようになります」
火で沸かした白湯を飲む
白湯(さゆ)を飲むことで消化力や代謝がアップするほか、味覚もよくなります。
「そのため、口さびしくてついなにかを食べてしまうことがなくなります」
1日に何度飲んでもよいですが、一番おすすめなのは朝の起き抜けの時間。お湯は電気製品ではなく火で沸かすようにしましょう。
「飲みつづけていると味のついていない、まろやかな白湯にほっとするし、体の中が洗い流される感覚がします」
3つのスパイスでデトックス
ドライジンジャー、黒こしょう、長こしょうのパウダーを1対1対1の割合で混ぜたものがアーユルヴェーダで「トリカトゥ」と呼ばれるもの。「トリ」は「3」、「カトゥ」は「辛い」という意味で、カファを減らし消化力も高めてくれます。
「手に入りやすく、自分でつくれます。調味料としてスープや炒めものに使うほか、生野菜にかけるとカファを増やす要素である冷えも抑えられます」
体力の半分程度の運動をする
晩冬から春先にかけて蓄積されるカファ。カファを増やす要因のひとつとして「動かない」ことが挙げられます。そのため、体を動かすことがカファを減らすのに有効です。
「最低限、体力の半分程度は運動するようにしましょう。目安としては少し息切れしたり軽く汗ばんだりするくらいです」
一駅分歩く、エスカレーターを階段にするなど、毎日のなかでできることを続けてみましょう。
日の出前に起床する
アーユルヴェーダの古来からの養生法のひとつが「ブラフマ・ムフールタ」と呼ばれる日の出前の時間帯に起床すること。この時間帯は周りが完全に静かで落ち着いていて、起床後に精神的な強さを得るとされています。
「神聖な時間帯のエネルギーを受けてから一日を始めることで精神や体を整え、自分にとって過剰なものを見極められるように。必要以上に食べなくなることにもつながります」
主食を粗く、軽いものに変更
アーユルヴェーダでは「冷たい」と「熱い」、「軽い」と「重い」など、対となる2つの属性があると考え、どちらかに傾きすぎると反対の性質でバランスをとります。
「カファの性質である『微細』『重い』『しっとりしている』ものを減らすには『粗い』『軽い』『乾燥している』ものが有効。主食でいえば、白いパンよりもライ麦パン、白米より雑穀米、うどんよりもそばを食べるのがおすすめです」
<撮影/林 紘輝 取材・文/嶌 陽子>
池田早紀(いけだ・さき)
大学在学中の2002年、南インドでアーユルヴェーダに出合い、2006年よりアーユルヴェーダ・カウンセラー&セラピストとして勤務開始。2021年より軽井沢アネモネ院、2022年より東京の新サロン「atelier asha 211」をオープン。http://ayurveda-foryourlife.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです