• 気分がふさぐ、不安になる。その原因は脳にあるかもしれません。無理なく続けられる、手軽なケア方法を医師で脳生理学者の有田秀穂さんに伺いました。今回は、セロトニンが活性化する“吐くこと”を意識した丹田呼吸を教わります。
    (『天然生活』2021年1月号掲載)

    セロトニンが活性化する“呼吸”

    深く呼吸する

    画像: 深く呼吸する

    下腹部をへこませながらしっかりと吐ききることが大事

    深い呼吸も、リズム運動のひとつです。

    「無意識のうちに行っている“吸う呼吸”とは違い、丹田(下腹部)をへこませて、“吐くこと”を意識する丹田呼吸です。坐禅の呼吸もこれと同じ。禅宗のお坊さんは、早朝にお堂で坐禅を組むのを習慣にしています。これによってセロトニンが活性化し、頭がすっきりするのです。ヨガや太極拳にも丹田呼吸が組み合わされています。いずれの場合も、吐くことを意識して呼吸をしっかりと行うことが大事です」

    丹田呼吸といっても難しくはありません。下の図を参考にしながら、集中できる静かな場所で、5〜30分行ってみてください。

    深い呼吸の仕方

     自然な呼吸を感じる

    画像1: “呼吸法”の工夫で、幸せホルモン=セロトニンを活性化しよう。心を元気にする「脳のセルフケア」/東邦大学名誉教授・有田秀穂さん

    椅子に座って背筋を伸ばし、片手をみぞおちに、もう片手をおへその下の下腹部に置き、自然に呼吸します。

    胸のあたり、横隔膜が動くのがわかります。これが、私たちがふだん、無意識のうちに行っている呼吸です。

     「あー」といって息を吐く

    画像2: “呼吸法”の工夫で、幸せホルモン=セロトニンを活性化しよう。心を元気にする「脳のセルフケア」/東邦大学名誉教授・有田秀穂さん

    手はみぞおちと下腹部に置いたまま、「あー」と声を出しながら、息を最後まで吐ききります。

    腹筋をへこませるように意識しましょう。

    慣れてきたら声を出さなくてもできるように。

     ゆっくりと息を吸う

    画像3: “呼吸法”の工夫で、幸せホルモン=セロトニンを活性化しよう。心を元気にする「脳のセルフケア」/東邦大学名誉教授・有田秀穂さん

    しっかりと吐ききったあと、ゆっくりと自然に、鼻で息を吸います。

    この呼吸法によってふだんは1分間に十数回行っている呼吸が3〜4回にまで減り、より深くなります。

    5分以上、集中して行うことが大切です。

    ハミングする

    画像: ハミングする

    深い呼吸が自然とでき、心身が元気になる

    好きな歌、よく知っている歌をハミングする。これにより、曲に合わせてリズムに乗れるうえ、自然と深い腹式呼吸になります。

    つまり“呼吸のリズム運動”を行うことで、セロトニンの分泌量が増えるのです。ハミングではなく大きな声で歌っても、もちろん効果があります。

    「ひとりカラオケもおすすめの方法。他人に気を使うことなく、思いきり好きな歌に集中できます。一方、家族や親しい人と一緒に歌うのは、気心の知れた人とのふれあい、つまりグルーミングの効果も期待できます」

    ウォーキングやランニングをする

    画像: ウォーキングやランニングをする

    人の多い場所は避け、刺激の少ない静かな場所を選ぶ

    疲れない範囲で行うと効果的なのがウォーキングやランニング。太陽光も同時に浴びられる朝がおすすめの時間帯です。

    「ポイントは、なるべく外部からの刺激が少ない、集中できる環境を選んで行うこと。理想は自然の中、それが無理でもなるべく静かな場所を選ぶようにしましょう。好きな音楽を聴きながら、リズムに乗って行うのはOKです」

    ウォーキングの際は「ハッハッハッ・スー」と3回吐いて1回吸う「三呼一吸」のリズムで、呼吸に意識を向けるとより集中できます。

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    <監修/有田秀穂 取材・文/嶌 陽子 イラスト/松尾ミユキ>

    有田秀穂(ありた・ひでほ)
    医師・脳生理学者。東邦大学医学部名誉教授。東京大学医学部卒業。長年にわたりセロトニンについて研究してきたこの分野の第一人者。メンタルヘルスケアをマネジメントする「セロトニンDojo」の代表も務める。著書に『医者が教える疲れない人の脳』(三笠書房)、『「脳の疲れ」がとれる生活術』(PHP研究所)など多数。https://serotonin-dojo.com/

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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