ふーみんロングセラー「ねぎワンタン」。熱々の油をジュッとかけて
南青山の人気店「ふーみん」を引退し、現在は溝の口のヴィンテージマンションの一室で、1日1組だけのお客様を迎える「斉(さい)」を営んでいる、“ふーみんママ”こと斉風瑞(さいふうみ)さん。
「ふーみん」を営むおよそ50年の歳月の中で、お客さまと一緒に考案したレシピも多数。そんなお店の大切なレシピの数々を、斉さんは出し惜しみなく公開しています。
「みんなに『おいしくつくれた』っていわれるのが一番うれしいの。お客さまからいろんなヒントをいただいて生まれた料理を、ぜひ家庭でもおいしくつくってもらいたいですね」と斉さんは笑います。
「ねぎワンタン」は「ふーみん」創業後すぐに生まれ、新しいお店「斉」でも必ず出すというロングセラーのメニュー。
たっぷりお肉が入ったワンタンの上に白髪ねぎをたっぷり。最後にあつあつの油をジュッとかけて仕上げます。
油をかけることによって、ねぎの香りが食材に移り味がなじむほか、ねぎ自体も食べやすくなるそう。
「油は温度がいちばん大切です。油は低温だと胸焼けしそうな感じになってしまうし、熱すぎると古い油のような味になる。かける油は1分くらいで熱くなるので、おうちでも気軽につくれますよ」
ねぎワンタンのつくり方
材料(4人分)
● ワンタンの皮 | 20枚(10cm四方) |
● 豚ひき肉 | 200g |
● 長ねぎ(せん切り) | 50g |
● しょうが(せん切り) | 5g |
● A | |
・長ねぎ(みじん切り) | 20g |
・ゆでたけのこ (みじん切り) | 20g |
・ごま油 | 小さじ2 |
・干ししいたけ(戻したものをみじん切り) | 20g |
● B | |
・しょうが汁 | 小さじ1/2 |
・酒 | 小さじ1 |
・しょうゆ | 小さじ2 |
・こしょう | 少々 |
● C | |
・だしじょうゆ、しょうゆ | 各大さじ1/2ずつ |
・こしょう | 少々 |
● 油 | 大さじ 3 |
つくり方
1 長ねぎとしょうがをせん切りにし、水にさらして辛みをとる。
2 Aの長ねぎとたけのこにあらかじめごま油をからめておき、水けが出ないようにする。
3 ひき肉に2を除いたAとBを合わせ入れて練る。最後に2を加える。
4 ワンタンの皮の中央に大さじ1/2の肉をのせ、三角形に折りたたんだら、ひと口大にする。
5 沸騰したお湯に、ワンタンを入れ、ワンタンが浮いてきたらザルに上げる(ゆで時間は約1分) 。
6 ワンタンに1のさらしねぎとしょうがをのせ、Cで味をつける。
7 別鍋に油を煙が出るまで熱したら、おたまを使ってワンタンに回しかけて完成。
イラストレーター・和田誠さんが生み出した「ねぎワンタン」
「ねぎワンタン」は、ふーみんの常連だったイラストレーターの故・和田誠さんのリクエストから生まれたメニューです。
もともとメニューにあった「ねぎそば」は、斉さんが高校生のときに台湾で食べた、台湾の蒸し鶏にねぎと油がかかっている料理(油葱鶏)をお店のメニューとしてアレンジしたもの。
「ある日、和田さんが『ねぎそばのねぎをワンタンにのせたらどう?』といってくれたんです。そしたら評判がよくて。神宮前のお店は小さかったので、他愛もないお客さんとのおしゃべりから料理が生まれたんです」
1971年、神宮前の小さなお店からスタートした「ふーみん」。和田誠さんはじめ、近隣に集まる多くのクリエイターの憩いの場として評判に。その縁で料理研究家の平野レミさんもお店に通うようになるなど、時代を彩る多くの文化人や著名人にも愛され続けています。
45年立ち続けた「ふーみん」の厨房から離れ、いまは「斉」で、お客さんとの対話や料理を考案する時間を楽しみながら、自分のペースで料理を続けている斉さん。
改めて「斉さんにとって料理とは?」とお聞きすると、笑顔でこたえてくれました。
「料理って、生きるために絶対必要なもの。だからこそ、それなりに手をかけて、愛情を持ってつくっていけば、毎日がより豊かになるのかなって思います。ぜひ家庭でも、“思い”を料理に託して、料理をもっと楽しんでもらいたいですね」
斉さんと「ふーみん」の物語を描いた長編ドキュメンタリー映画『キッチンから花束を』では、「ねぎワンタン」をはじめ、「ふーみん」で生まれたメニューのエピソードについてもたっぷり紹介しています。
『キッチンから花束を』
斉風瑞(さいふうみ)と南青山「ふーみん」の物語
台湾人の両親をもち、日本で生まれ育った斉風瑞(ふーみんママ) は、友人の一言から1971年、神宮前に小さな中華風家庭料理のお店「ふーみん」をオープン。父と母からもらった確かな味覚と温かな愛情。45年にわたって愛されつづけてきた中華風家庭料理「ふーみん」の厨房から、 70歳をきっかけに、勇退。だれもが、引退したと思ったが料理に対する思いと探求は変わらず、2024年現在、溝の口にて、1日1組だけのお客様を迎える「斉」を営んでいる。なぜ、ふーみんは、斉風瑞は愛されるのか。料理が生まれていくストーリーと数々の証言、日本と台湾、そして斉風瑞の家族を3年半にわたり追いつづけた長編ドキュメンタリー映画。
5月31日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国順次公開
■公式HP: www.negiwantan.com
■公式SNS:X:@fumin_movie、Instagram:@fumin_movie
〇上映時間:89分
■配給: ギグリーボックス
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〈撮影/林 紘輝 〉
斉風瑞(さい・ふうみ)
台湾人の両親をもち、日本で生まれ育った料理人で、中華風家庭料理のお店「ふーみん」の創業者。70歳でふーみんの厨房を勇退。その後は1日1組だけの「斉」を営む。
中華風家庭料理「ふーみん」
東京・南青山の小原流会館の地下に連日長い行列が出来る超人気店。先日、「1億3000万人のSHOW チャンネル」で嵐の櫻井翔さんが「納豆にこんなにウマい食べ方があったのか!」と絶賛した、看板メニュー “納豆チャーハン”や、故・和田誠さん(イラストレーター)が生み出した“ねぎワンタン”、“豚肉の梅干煮”など数々の名物料理をつくり出してきた。また、本編にも登場する平野レミさん(料理研究家)や五味太郎さん(絵本作家)など、時代を彩るクリエイターにも長年に渡って愛され続けている。