(『天然生活』2023年7月号掲載)
ときめきの優先順位が変わりました
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
片づけられない時期というのはだれにでもある。この数年で、私が身をもって学んだことです。私にはいま、7歳と6歳の娘、そして2歳の息子がいます。
息子が生まれて以降、私にとって一番の「片づけられない時期」が始まりました。上の2人の娘たちはよく寝る子だったのですが、息子はなかなか寝てくれず、私も常に寝不足の状態。
日中ぼんやりしてしまう日が続き、それまでのような生活ができなくなってしまったのです。
そんななか、子どもと過ごす時間や家族と自分の健康管理、そして自分がやるべき分の仕事を優先したところ、片づけは自然と後回しになり、家は以前よりも散らかるように。
片づけを仕事にしているのに、こんなことでいいのだろうかと悩んだこともありましたが、「これは一時的なことで、いまは子どもと過ごすこと、子どもの健康を守ることのほうが大事。いつか時間ができれば片づけられるし、その方法も知っているのだから」と少しずつ思えるようになってきました。
「片づけのルール」を一時的にお休みして、片づけ法を見直しました
それまで守っていた片づけのルールも一時的にお休み。たとえば、使い終わったものはその都度定位置に戻していたのを、各部屋に一時置き場をつくっていったんそこに入れるようにしたり、子どものおもちゃもその都度ではなく、夜にまとめてしまうようにしたり。
家族や自分が気分よく、健康に過ごせるよう、状況に合わせて片づけ法を見直していくことも必要だと思います。
その際、自分のなかで大切にしたいことを明確にすると、見直しもしやすいのではないでしょうか。たとえば、大好きなお茶の道具のコーナーだけは整理しようとか、洗面所にだけは花を飾ろう、とか。
小さなことでも「これだけはキープしよう」と思って実践すると、心が穏やかでいられるし、自信ももてるような気がします。
たとえば私の場合、寝室は子どものおもちゃなどで散らかさないようにしていました。私にとって、寝室は心身をすこやかに保つ大事な空間だと思ったからです。
最近は息子も夜、眠れるようになり、以前よりは片づけの時間が取れるようになってきました。そこであらためて感じたのが、片づけの大切さと気持ちよさ。
適量のモノがあるべきところに収まっていると暮らしも楽にまわせるし、気持ちも落ち着きます。私はやっぱり片づけが好きだし、片づけをお手伝いする仕事を続けていきたい、と再認識しているところです。
「片づけられない」のではなく、「ほかのことをがんばっている」
ただ、今回の経験で実感したのは、片づけるのには体力も気力も必要だということ。本当に大変なときは、片づけたいという気持ちすらわいてこないものなのだと、息子の育児を通してあらためて思いました。
いま、「忙しくて家が散らかってしまう」という人には「片づけはいったん置いておいて、1分でも多く自分の体を休めてください」と言いたいです。
私の場合は育児でしたが、ほかにも仕事や介護など、さまざまな理由で心身に余裕がなく、なかなか片づけられないという人もいるでしょう。
でもそれは「片づけられない」のではなく、仕事や育児、介護など「ほかのことをがんばっている」ということ。そんなときは、必ずしも片づけを優先しなくていいと思うのです。
大切なのは、いまの自分や家族にとってどのように時間を使うと心地よく、ときめくのかということ。そんな「ときめきの優先順位」を考えてみるといいのではないでしょうか。
その順位は人生の段階に応じて変化していいはずだし、必ずしも片づけが上位に来ない時期もあるはず。
自分や周りが幸せになる時間の使い方を第一に考えてみると、片づけられない時期も自分を責めずにいられる気がします。
どうか無理をせず、そのときどきのときめきを大切にして毎日を過ごしてほしいです。
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<取材・文/嶌 陽子 イラスト/芳野>
近藤麻理恵(こんどう・まりえ)
片づけコンサルタント。2010年に出版した『人生がときめく片づけの魔法』は世界的ベストセラーに。近著に『人生がときめく魔法の片づけノート』(扶桑社)、川村元気さんとの共著『おしゃべりな部屋』(中央公論新社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです