Q: 加齢とともに薄毛と抜け毛が気になります。おすすめのケア方法は?
昔より髪の毛が細くなってきた気が……
40歳を過ぎたころから薄毛と抜け毛が気になり始めました。後頭部のボリュームが少なくなり、分け目もくっきりしてしまった気がします。髪の毛自体が細くなっているのかもしれません。
春と秋は抜け毛が増えると聞いたのですが、季節は関係がありますか?
生活習慣や漢方で薄毛と抜け毛を防ぐ方法があれば知りたいです。
(ST さん/40代・会社員)
A:漢方では「腎虚」の考え。頭皮の血流ケアや女性ホルモンを整える習慣を
女性の髪の毛は30代を超えると細くなります
秋の抜け毛対策、夏のうちに頭皮や紫外線ケアを
今回のSTさんからのご相談は、薄毛と抜け毛のお悩みです。髪の毛が細くなってきていて、髪のボリュームが少なくなり、分け目もくっきりしてきたのですね。
実は髪の毛は男性では20代後半、女性では30代以降で一般的には年齢と共に細くなってきます。ただ、この進行が早い場合には頭皮の血流や栄養状態が悪くなってきている可能性もありますね。
また春と秋に抜け毛が増えるというのは、多くの人が経験している事実でもあります。
さまざまな原因が考えられているのですが、春と秋は季節の変わり目で気圧の変動や気温の変化が激しく、自律神経のバランスが乱れやすいことも関係があるといわれています。
春はまた新しい生活が始まる季節でもあり、ストレスを感じやすい影響もあるといわれています。
秋の抜け毛は、その前の夏の髪や頭皮へのダメージが影響しているといわれています。
夏の強い紫外線、プールの塩素の影響、エアコンの使用による室内の乾燥、汗をかくことによる皮脂の増加による頭皮のトラブルの影響などです。
なので、秋の抜け毛を防ぐには夏から頭皮や髪をケアしておくことが大切です。
紫外線から髪を守るための帽子や日傘、紫外線カット効果のあるヘアケア商品の利用などもおすすめです。
また頭皮の分泌物のトラブルを防ぐために適切なシャンプーでの洗髪、エアコンの利用時にも室内の湿度を適切に保つことも大切です。
またこれは夏に限らず、ストレスをさけ、規則正しい生活や適度な運動、十分な睡眠をとるなどで自律神経を整えること、バランスの取れた食事で髪や頭皮の栄養を摂取することも大切です。
髪の毛を丈夫にする「タンパク質」、女性ホルモンの働きを補う「大豆イソフラボン」などが◎
以前の白髪のお悩みの記事も参考にしていただければ幸いですが、髪の毛を丈夫にする「タンパク質」や亜鉛、銅、鉄などの「ミネラル」、「ビタミンB群」、「ビタミンE」、女性ホルモン作用のある「大豆イソフラボン」をとるのも有用です。
タンパク質は乳製品や魚、肉類に、ビタミンBは豚肉やレバー、魚に、ビタミンEは卵黄、アーモンド、ウナギに豊富です。
大豆イソフラボンは納豆や豆乳、豆腐などを摂るのもよいですね。
髪の毛に必要な亜鉛や銅、鉄などのミネラルは牡蠣、ワカメなどの海藻類、ナッツ類や黒ごまなどから摂ることができます。
抜け毛と薄毛におすすめの漢方
漢方では加齢と共に起こる抜け毛や薄毛は「腎虚(じんきょ)」という概念に当てはまります。
腎虚というのは腎臓が悪いという意味ではなくて、年齢と共にエネルギーの産生源である腎の機能が衰えてパワー不足になるという考え方です。
例えると携帯電話のバッテリーの充電が少なくなっているような状態で、携帯の機能をフルに活用できない状態とも言えるかもしれません。
腎虚の症状は抜け毛や薄毛の他にも耳が遠くなる、目が霞む、トイレが近い、腰が痛い、インポテンツなど性機能が弱ってくるなど一般的な老化現象全てを含む概念です。
そして昔から“腎虚をよくする・補う"という意味で「補腎剤」という漢方薬があり、代表的なものが八味地黄丸(はちみじおうがん)です。
八味地黄丸は温めて元気をつける漢方薬で、腎のパワーを補います。携帯電話のバッテリーを充電するようなイメージのお薬です。昔から滋養強壮のお薬として有名で今でもよく使われています。
この八味地黄丸から温めたり、のぼせをとるブシや桂皮を抜いたものが六味丸(ろくみがん)、むくみをとり、痛みを和らげる牛膝、車前子を加えたものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)です。
ほかには頭皮の血流をよくし、女性ホルモンを整える桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や栄養状態を改善する作用のある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などもおすすめです。
今回の記事がSTさんはじめ薄毛や抜け毛で悩んでいる皆さまのお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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