(別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39掲載)
好きなものを見つけたら一直線
新緑が美しい京都市左京区。哲学の道から少し外れた住宅地の奥に、小さな平屋が立っています。外観はガルバリウム鋼板を張ったモダンな佇まい。
ここが、広川マチ子さんが70歳を過ぎて選んだわが家でした。
東京・吉祥寺でヴィンテージの生地の店や、ギャラリーを営んでいたマチ子さん。そのころ出合ったのが、画家の西原功織(こうし)さんの絵でした。
「ビリビリッと心が震えました。ギャラリーのオープニングはこの人だって、お願いしたんですよ」
幼いころから絵画教室に通い、美術大学に進んだというマチ子さん。こんなふうに、好きなものを見つけたらいつも一直線。その人が有名だとか、みんながどういうかなんて、まったく気にしません。
大好きな画家の大きな絵をリビングの主役に
東京から京都への引っ越しもそうでした。
大学時代から京都と彫刻が好きで、仏像を見るためにお寺めぐりをしていたそうです。「人生の最後には、京都に住みたい」。
そんな思いをずっと胸の中で温めつづけ、お母さまを看取ったのを機に、エイッと行動を起こしたというわけです。
「インターネットでセンスのいいこだわりの不動産屋さんを3件くらいピックアップして、チェックしはじめたら、この家が紹介されていたんです。写真を見て『ここだ!』って思いました。ものすごく古くて、建て替え不可って書いてあったけれど、平屋だったし、50平米ぐらいの広さもちょうどよかった。京都の知り合いに『いい工務店さん知ってる?』と聞いてみたら、すぐに3軒を紹介してくれて。そのなかでピピッときた1軒にお願いし、『チームマチ子』を結成して、やりとりしながら、リフォームしたんです」
リビングの主役は西原さん作の絵。「この絵を眺めるための家がつくりたかったの」とマチ子さん。
〈撮影/石川奈都子 構成・文/一田憲子〉
本記事は別冊天然生活『暮らしのまんなか』vol.39からの抜粋です
↓↓ 別冊天然生活『暮らしのまんなか』最新刊 ↓↓
一冊を通してのテーマは、「大事なことをひとつだけ決める」。
家事を全部がんばると、長続きしなかったり、途中で疲れてしまったり。 そんなときは、これだけは譲れない、という一番大事なことをひとつだけ見つけてみるのはいかがでしょう?
ただし、「ひとつだけ」というところが難しい! 「ひとつ」をチョイスするということは、ほかを諦めるということです。 捨て去る勇気を持ったとき、 どうしても手放せない確かなものがきらりと輝きはじめます。
本書では、紆余曲折しながら、暮らしのなかの大事なことをひとつだけ決めた12人を取材。 その結果手に入れた、無理せずラクに暮らしを回していくための収納と段取りの仕組みづくりを紹介しています。
広川マチ子(ひろかわ・まちこ)
美術大学を卒業後、百貨店での商品企画のアドバイザーを経て渡米。アンティークの買い付けを行う。帰国後、東京・吉祥寺にヴィンテージの生地や雑貨の店「Socks* ciao!」をオープン。洋服のセミオーダーの店「A-materials」や、アートを展示する「A-things」と形態を変えたあと、実店舗はクローズ。2年前に京都に移住。
※ 記事中の情報は取材時のものです