(『天然生活』2021年5月号掲載)
「朝」の小さな習慣で免疫力は上がる
「体の中にはたくさんの免疫細胞があって、その約7割が腸内の腸壁付近にいます。腸内環境を整えることは、そのまま免疫力をアップすることになるのです」という小林院長。
免疫力の向上にもうひとつ大切になってくるのが、自律神経です。
自律神経は、脳からのさまざまな司令を体のすみずみに伝達し、各臓器の働きをつなぐ存在。自律神経のバランスが崩れると、当然、腸の働きが悪くなり、免疫力が低下してしまいます。
朝は、腸を動かして便を排出し、腸内環境をリセットする時間。副交感神経から交感神経へ自律神経が切り替わるのも朝です。
「そのため、朝をどう過ごすかが免疫力を上げる大きなポイントとなります。今回は忙しい朝でも簡単にできる腸活や、自律神経を整える方法をご紹介しますので、自分が気軽にできそうなことから取り入れてみてください」
まずは自律神経にやさしい目覚めのために
いままでより30分早く起きる
朝は、副交感神経から交感神経へと自律神経がゆるやかに切り替わる時間です。
あせってあわただしくしていると緊張感が高まり、交感神経が急激に活発化。
そうすると、その日一日、自律神経が乱れて不調を感じやすくなります。
自律神経と連動して腸の働きも悪くなり、免疫力低下の原因となります。
「朝はこれまでより30分だけ早起きすることで、朝スイッチをスムーズに入れるようにしましょう。時間に余裕があると、心にもゆとりが生まれて、朝食やトイレ、朝の準備もゆっくりできます」
自律神経にやさしい目覚めには、けたたましいベルの目覚ましよりもやわらかな音色や音楽がおすすめです。
免疫力を高める起きてすぐの過ごし方 01
目覚めたら、ベッドの中で簡単ストレッチ
起きたらすぐにベッドの中で簡単ストレッチをすることで、体をスッキリ目覚めさせましょう。
「簡単ツイスト」は、仰向けに寝たままで、両ひざを左右に倒してねじるだけ。外から刺激を与えて腸のぜん動運動を促します。
眠っていた腸が動き出して、朝のスムーズな排便に効果が。
また、寝ている間に固まっていた体をほぐして血流をよくします。
「簡単ツイスト」のやり方
1 仰向けになり、両ひざをそろえて立てる。腕は左右に開き、手のひらを上へ向ける。
2 息を吐きながら、ひざを左側に倒す。ひざの動きに合わせ、手のひらを下に向ける。
3 息を吸いながらゆっくりと1の姿勢に戻る。
4 2、3と同様にひざを右側に倒し、1の姿勢に戻る。左右交互に何度か繰り返す。
免疫力を高める起きてすぐの過ごし方 02
起き抜けに、コップ1杯の水を一気に飲む
寝ている間に腸は消化・吸収を終え、朝は休んでいる状態です。
その腸を動かすために、朝起きたら、まずはコップ1杯の水を“一気に”飲むのがおすすめ。
空っぽの胃が重くなり、腸の動きを刺激してくれます。
勢いよく飲むことで、腸に刺激が伝わりやすくなります。
寝る前、枕元に水を入れた水筒やマグボトルなどを用意しておき、目覚めと同時に飲んでもいいでしょう。
「水の温度は温かくても冷たくてもOKですが、冷え性の人は温かくして飲むほうがいいですね。甘い飲み物やお酒でなければ、水以外のお茶などでも大丈夫です」
睡眠中に失われた水分を補給することで、便をやわらかくする効果もあります。
免疫力を高める起きてすぐの過ごし方 03
カーテンを開けて朝日を浴びる
朝は「体内時計をリセットする」時間です。
新陳代謝やホルモン分泌は、体内時計に合わせて行われますが、体内時計は25時間サイクル。1日の24時間と、少しずつずれていきます。
そのずれを正してくれるのが、朝の太陽の光です。太陽の強い光を浴びることで、体内時計が1時間早まり、調整されるのです。
「起きたら寝室のカーテンを開けて朝日をたっぷり浴びるようにします。寝るときもレースのカーテンだけにして、朝、自然に窓から日の光が入るようにするのもいいですね。朝一番で、玄関やベランダに出て、太陽を浴びながら深呼吸するのもおすすめです」
朝日を浴びるとメラトニンの分泌も促されるので、質のよい睡眠にもプラスです。
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お金をかけず、少し手をかけて健康になる
暮らしを楽しむには、心と体の健康が大切です。心と体、お財布にもやさしく健康を保つには、元気なうちから体にいい習慣を実践して、不調や病気になりにくい暮らしをすることです。この本では、そんな、生き生きとした暮らしを送っている素敵な皆さんの健康習慣や、医師や専門家が教える、簡単に取り入れられる健康習慣、脳と心の健やかさを手に入れる方法を紹介します。健康を支えるタンパク質とカルシウムがたっぷり摂れる料理や、薬膳効果のあるスープのレシピも掲載しています。健康習慣を始めるのは、いくつになっても、遅すぎることはありません。自分だけではなく、家族のためにも健康寿命を延ばす習慣を暮らしに取り入れてみませんか。
【目次】
1章 あの人の健やかさの秘訣
三上津香沙さん 下半身を温め、ゆるめて、めぐりのよい心と体に
大橋マキさん 地元に育つ和ハーブで体を健やかに保つ
德田民子さん 暮らしも健康も「ゆるやかなルール」で
引田かおりさん バランスを大事にして、体と上手につきあう
しらいのりこさん よい習慣を増やすことが、おのずと太らない暮らしに
山田奈美さん 旬の食材と発酵食を毎日の食事に取り入れて
2章 元気で若々しい体をつくる習慣&エクササイズ
免疫力を高める朝の習慣
健康寿命を延ばすお風呂の入り方
血流をよくする1分エクササイズ
心と体をゆるめる寝る前のストレッチ
やせて、冷えにくい体をつくるねじれ筋伸ばし
脳を若返らせる習慣
3章 気になる症状を整える
頭痛とうまくつきあう
更年期を穏やかに過ごすための養生
草薙龍瞬さん 満たされて暮らす新しい心のあり方
タンパク質・カルシウムごはん
薬膳デトックススープ
〈取材・文/工藤千秋 イラスト/花松あゆみ〉
小林暁子(こばやし・あきこ)
医学博士。順天堂大学医学部卒業。同総合診療科での経験を経て、便秘外来・内科・皮膚科・女性外来など全身の不調に対応する「小林メディカルクリニック東京」を開業。院長としてトップアスリートやエグゼクティブの患者も数多く担当し、テレビ出演、講演なども多数。著書に『免疫力を上げる健美腸ルール』(講談社)などがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです