(『天然生活』2021年5月号掲載)
「朝」の小さな習慣で免疫力は上がる
「体の中にはたくさんの免疫細胞があって、その約7割が腸内の腸壁付近にいます。腸内環境を整えることは、そのまま免疫力をアップすることになるのです」という小林院長。
免疫力の向上にもうひとつ大切になってくるのが、自律神経です。
自律神経は、脳からのさまざまな司令を体のすみずみに伝達し、各臓器の働きをつなぐ存在。自律神経のバランスが崩れると、当然、腸の働きが悪くなり、免疫力が低下してしまいます。
朝は、腸を動かして便を排出し、腸内環境をリセットする時間。副交感神経から交感神経へ自律神経が切り替わるのも朝です。
「そのため、朝をどう過ごすかが免疫力を上げる大きなポイントとなります。今回は忙しい朝でも簡単にできる腸活や、自律神経を整える方法をご紹介しますので、自分が気軽にできそうなことから取り入れてみてください」
免疫力を高める朝食のとり方 01
朝食前にアマニ油を大さじ1杯
便秘気味の人はもちろん、そうでない人も、朝食前にテーブルスプーン1杯のアマニ油をとって腸の動きを活発にしましょう。
アマニ油のオイルが便をコーティングしてスムーズに排便できるようになります。
アマニ油には、オレイン酸、α–リノレン酸、リグナン、リノール酸など、体によい成分がたっぷり。とくにオレイン酸は大腸を刺激するので、腸のぜん動運動を活発にしてくれます。
「オイルをそのまま飲んでもいいですし、ヨーグルトに入れる、パンにつける、サラダにかけるなどの方法もあります。アマニ油は加熱で酸化するので、そのまま摂取するのがポイントです。アマニ油の代わりにオリーブオイルを大さじ2杯でもOKです」
免疫力を高める朝食のとり方 02
バナナ1本でも、必ず朝食を
健康な腸内環境を保つためには、「1日3食」がベストです。
朝食を食べると自律神経の働きがスムーズになり、腸も活発に動き出します。
また、朝食は血糖値の上昇を抑えてくれる効果があり、生活習慣病の予防にも。
朝はあまり食欲がない、食べる時間がないという人は、バナナ1本だけでもいいので、おなかに入れる習慣をつけましょう。
「バナナは、水溶性食物繊維のペクチンが豊富で、便をやわらかくする効果もあります。腸内環境を整えるオリゴ糖やミネラルも豊富なので、朝食にはもってこいのフルーツです。りんごやキウイフルーツもペクチンが豊富なので、飽きないようにローテーションして食べるのもいいですね」
免疫力を高める朝食のとり方 03
朝1杯のネバトロ味噌汁で免疫アップ
食物繊維には、便のかさを増すことで腸の動きを促す不溶性と、便をやわらかくする水溶性の2種類が。
スムーズなお通じのためには摂取バランスが大切。不足しがちな水溶性食物繊維を積極的にとるようにしましょう。
「水溶性食物繊維が豊富なのは、納豆、オクラ、なめこ、めかぶ、山いものようなネバネバ食材。腸内環境を整える味噌×納豆の発酵食品コンビに、ネバネバ食材を加えた味噌汁は胃腸を温め、朝の排便もスムーズに」
「ネバトロ味噌汁」のつくり方(材料はすべて適量)
鍋にだし汁を入れて温め、味噌を溶き入れる。めかぶを加えてひと煮立ちさせ、納豆を加えて火を止める。椀によそい、刻んだ細ねぎを散らす。納豆は最後に加えるのがポイント。
免疫力を高める朝食のとり方 04
朝食後にヨーグルトを
腸内環境を整えるヨーグルト。食後に食べる方が、善玉菌が腸に届きやすいのでおすすめです。
ヨーグルトに入っている菌はいろいろな種類がありますが、主に乳酸菌系は小腸に、ビフィズス菌系は大腸に働きかけます。
「1日に食べる目安は200g。野菜や果物など食物繊維が豊富な食材と組み合わせて食べると、より便秘解消に効果があります」
腸に効くヨーグルトレシピ
「大根おろしヨーグルト」のつくり方
プレーンヨーグルト100gに対し、大根おろし、はちみつ各大さじ1を混ぜ合わせたものをかけていただく。
「グラノーラヨーグルト」のつくり方
食物繊維の多いシリアルに、はちみつとヨーグルトを各適量かけていただく。
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お金をかけず、少し手をかけて健康になる
暮らしを楽しむには、心と体の健康が大切です。心と体、お財布にもやさしく健康を保つには、元気なうちから体にいい習慣を実践して、不調や病気になりにくい暮らしをすることです。この本では、そんな、生き生きとした暮らしを送っている素敵な皆さんの健康習慣や、医師や専門家が教える、簡単に取り入れられる健康習慣、脳と心の健やかさを手に入れる方法を紹介します。健康を支えるタンパク質とカルシウムがたっぷり摂れる料理や、薬膳効果のあるスープのレシピも掲載しています。健康習慣を始めるのは、いくつになっても、遅すぎることはありません。自分だけではなく、家族のためにも健康寿命を延ばす習慣を暮らしに取り入れてみませんか。
【目次】
1章 あの人の健やかさの秘訣
三上津香沙さん 下半身を温め、ゆるめて、めぐりのよい心と体に
大橋マキさん 地元に育つ和ハーブで体を健やかに保つ
德田民子さん 暮らしも健康も「ゆるやかなルール」で
引田かおりさん バランスを大事にして、体と上手につきあう
しらいのりこさん よい習慣を増やすことが、おのずと太らない暮らしに
山田奈美さん 旬の食材と発酵食を毎日の食事に取り入れて
2章 元気で若々しい体をつくる習慣&エクササイズ
免疫力を高める朝の習慣
健康寿命を延ばすお風呂の入り方
血流をよくする1分エクササイズ
心と体をゆるめる寝る前のストレッチ
やせて、冷えにくい体をつくるねじれ筋伸ばし
脳を若返らせる習慣
3章 気になる症状を整える
頭痛とうまくつきあう
更年期を穏やかに過ごすための養生
草薙龍瞬さん 満たされて暮らす新しい心のあり方
タンパク質・カルシウムごはん
薬膳デトックススープ
〈取材・文/工藤千秋 イラスト/花松あゆみ〉
小林暁子(こばやし・あきこ)
医学博士。順天堂大学医学部卒業。同総合診療科での経験を経て、便秘外来・内科・皮膚科・女性外来など全身の不調に対応する「小林メディカルクリニック東京」を開業。院長としてトップアスリートやエグゼクティブの患者も数多く担当し、テレビ出演、講演なども多数。著書に『免疫力を上げる健美腸ルール』(講談社)などがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです