(『天然生活』2021年5月号掲載)
「朝」の小さな習慣で免疫力は上がる
「体の中にはたくさんの免疫細胞があって、その約7割が腸内の腸壁付近にいます。腸内環境を整えることは、そのまま免疫力をアップすることになるのです」という小林院長。
免疫力の向上にもうひとつ大切になってくるのが、自律神経です。
自律神経は、脳からのさまざまな司令を体のすみずみに伝達し、各臓器の働きをつなぐ存在。自律神経のバランスが崩れると、当然、腸の働きが悪くなり、免疫力が低下してしまいます。
朝は、腸を動かして便を排出し、腸内環境をリセットする時間。副交感神経から交感神経へ自律神経が切り替わるのも朝です。
「そのため、朝をどう過ごすかが免疫力を上げる大きなポイントとなります。今回は忙しい朝でも簡単にできる腸活や、自律神経を整える方法をご紹介しますので、自分が気軽にできそうなことから取り入れてみてください」
免疫力を高めるストレスのない朝の過ごし方 01
花の水替えをする
朝の自律神経を整えることは、免疫力アップにとても大切です。五感で自然を感じると、交感神経の高まりが抑えられ、自律神経のバランスがよくなります。
「朝、花びんの水を取り替えるだけでも、気持ちがリフレッシュして癒やされます。花の手入れをして、花の美しさや色合い、香りを楽しみましょう。嗅覚は、五感のなかでも最も敏感なので、ダイレクトに心を落ち着かせてくれます。お気に入りのアロマで、朝時間を過ごすのもいいですね」
さわやかな朝を演出する花やアロマは、「香りを楽しむ時間」にもぴったり。
空を見上げる、風を感じる、散歩して緑を眺めるなど、身近な自然を感じるのもおすすめです。
免疫力を高めるストレスのない朝の過ごし方 02
家事がひと段落したら、深呼吸
時間に追われがちな朝は、交感神経が無意識に高まり、呼吸が浅くなっています。1日の始まりこそ、副交感神経を働かせて、ストレスのない朝を迎える習慣をつけましょう。
「朝の家事がひと段落したら、ひとまず深呼吸。イライラした気分がスッと落ち着いて自律神経が穏やかに。腸の動きも安定します」
深呼吸をするときは、吸う息の2倍の長さでゆっくりと息を吐くのがポイントです。
「ワンツー深呼吸」のやり方
1 おなかの動きに意識を向けやすいよう、おへその周りに三角形をつくるようにして、両手をおなかに当てる。
2 4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて口からゆっくりと息を吐く。おなかを絞るような感覚で、おなかの空気を全部出しきる。
免疫力を高めるストレスのない朝の過ごし方 03
朝のトイレタイム前にストレッチ
毎日お通じがなくても心配することはありませんが、それでも朝、トイレに10分座って排便のペースをつくる習慣は大切。
トイレの前に、腸の働きを活発にするストレッチをして、排便しやすい体をつくりましょう。
「上半身をしっかり伸ばすと、副交感神経が働き、腸のぜん動運動を刺激します。体が伸びる気持ちよさを全身で感じましょう」
「上半身伸ばし」のやり方
1 立った姿勢で、両足を肩幅に開き、両うでをまっすぐ前に伸ばす。そのまま左手で右手をつかむ。
2 左手で右手をゆっくり横に引っ張り、上体をしっかり伸ばす。
3 ゆっくりと1の姿勢に戻る。
4 左右の手を替えて、2、3と同様に左手を引っ張り、1の姿勢に戻る。左右交互に何度か繰り返す。
免疫力を高めるストレスのない朝の過ごし方 04
“考える人”のポーズでトイレに座る
「トイレでは無理に便を出そうとがんばる必要はありません。便意がないのにいきみすぎると交感神経が高まり、かえってストレスに。自律神経のバランスを崩してしまいます」
寝ている間に、便は出口付近まで下りてきています。
便意はあるのになかなかでない、というときは、トイレで「あとひと押し」をしてくれる“考える人”ポーズを。
確実に腸を刺激して、お通じも快適になります。
“考える人”のポーズのとり方
1 便座に座り、右ひじを反対の左ひざにつくまで前傾姿勢になる。
2 つま先を床につけ、かかとを上げる。足が届かなかったり、バランスが取りづらかったりする場合は、踏み台などを使って。同様に逆も行う。
免疫力を高めるストレスのない朝の過ごし方 05
出かける前に鏡で、“にっこり”
セロトニンという幸せホルモンを分泌する「笑い」。メンタルへの影響はもちろん、健康にも大きな効果があります。
セロトニンは免疫力を高める、ストレスを解消して自律神経を安定させる、血圧や血糖値を下げるなどの効果が実証されています。
朝、顔を洗うとき、お出かけ前の全身チェックのときなど、鏡の前に立つたびに、口角を上げて“にっこり”笑顔をつくるようにしましょう。
「“つくり笑顔”でもセロトニンが分泌されることがわかっています。とくにうれしいことがなくても、とにかく口角を上げて“にっこり”するのを習慣にすることがポイントです。周囲にも、“朝から笑顔で、素敵な人だな”という印象を与えられますよ」
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お金をかけず、少し手をかけて健康になる
暮らしを楽しむには、心と体の健康が大切です。心と体、お財布にもやさしく健康を保つには、元気なうちから体にいい習慣を実践して、不調や病気になりにくい暮らしをすることです。この本では、そんな、生き生きとした暮らしを送っている素敵な皆さんの健康習慣や、医師や専門家が教える、簡単に取り入れられる健康習慣、脳と心の健やかさを手に入れる方法を紹介します。健康を支えるタンパク質とカルシウムがたっぷり摂れる料理や、薬膳効果のあるスープのレシピも掲載しています。健康習慣を始めるのは、いくつになっても、遅すぎることはありません。自分だけではなく、家族のためにも健康寿命を延ばす習慣を暮らしに取り入れてみませんか。
【目次】
1章 あの人の健やかさの秘訣
三上津香沙さん 下半身を温め、ゆるめて、めぐりのよい心と体に
大橋マキさん 地元に育つ和ハーブで体を健やかに保つ
德田民子さん 暮らしも健康も「ゆるやかなルール」で
引田かおりさん バランスを大事にして、体と上手につきあう
しらいのりこさん よい習慣を増やすことが、おのずと太らない暮らしに
山田奈美さん 旬の食材と発酵食を毎日の食事に取り入れて
2章 元気で若々しい体をつくる習慣&エクササイズ
免疫力を高める朝の習慣
健康寿命を延ばすお風呂の入り方
血流をよくする1分エクササイズ
心と体をゆるめる寝る前のストレッチ
やせて、冷えにくい体をつくるねじれ筋伸ばし
脳を若返らせる習慣
3章 気になる症状を整える
頭痛とうまくつきあう
更年期を穏やかに過ごすための養生
草薙龍瞬さん 満たされて暮らす新しい心のあり方
タンパク質・カルシウムごはん
薬膳デトックススープ
〈取材・文/工藤千秋 イラスト/花松あゆみ〉
小林暁子(こばやし・あきこ)
医学博士。順天堂大学医学部卒業。同総合診療科での経験を経て、便秘外来・内科・皮膚科・女性外来など全身の不調に対応する「小林メディカルクリニック東京」を開業。院長としてトップアスリートやエグゼクティブの患者も数多く担当し、テレビ出演、講演なども多数。著書に『免疫力を上げる健美腸ルール』(講談社)などがある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです