(『天然生活』2021年8月号掲載)
いまも心躍る「大人のままごと」です
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
地植え、鉢、プランターと、草木に親しむ方法はさまざま。時を経て、桑の葉もこんなに立派に。
「自分で育てれば、農薬の心配もなく安心です」
かねてより「趣味は暮らし」と語る横山さんは、葉使いへの思いをこんなふうにも話します。
「今日はどんな葉を使おうか。そう考えて庭に出る時間は、本当に幸せで。子どものころ、桜の葉の上にタンポポを並べて遊んでいたのと変わらず、いまも心躍る『大人のままごと』なんです」
そのうえ、柿の葉や笹など、食品への殺菌効果を発揮してくれるものもたくさん。まさに日々の暮らしに根ざした知恵です。
そして、「たとえ庭がなくても、ベランダで育てられて役立つものもたくさんありますよ」と、うれしいアドバイスも。
「お皿に敷くほか、お弁当の仕切りにも役立つハランは、ひと株でも植木鉢で育てておけば丈夫で長持ち。みょうがも、プランターなどに植えておくと、食べるだけでなく葉っぱを生かせるもののひとつですね」
横山さん流の、食卓に使う葉を選ぶポイントのひとつは、「実を口にできる植物」であること。
「クワ、アンズ、梅、アケビなどがそれにあたります。けれど念のため、求める際には園芸店などでご確認くださいね」
見回してみれば、近くにあるかもしれない「役立つ葉」。ほんの少し意識するだけで、植物へのまなざしも豊かに変わりそうです。
季節のもてなしに
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秋になれば実を酒に漬けて味わう「山ぶどう」も、この季節は葉の大きさと厚みを生かしてお皿として大活躍
朝鮮にんじんの粕漬けに玉子焼き、牛肉の味噌焼きなどなど。冷酒が進む「酒のアテ」をのせたのは、たっぷりと葉を広げた山ぶどう。
焼き魚の下にはホオの葉、お茶請けのカリカリ梅には桜の葉と、食材や時季に合わせて「葉っぱのもてなし」を楽しみます。
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「買ってきたおまんじゅうも、葉にのせるとぐっとおいしそうになるから不思議(笑)。
お客さまへの『ようこそ』の思いも伝わります」
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のせたい食材の大きさを思い描き、「庭の状態と相談しながら」葉を選ぶ
香りをいただくホオの葉の寿司
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見た目だけでなく、「香り」で料理を引き立てられるのも、葉使いのうれしいところ。
「この季節のホオの葉の香りを生かした『朴葉寿司』は、信州では木曽などで親しまれる伝統食。私はアレンジして、『お好み朴葉寿司』で楽しむことが多いんです」
酢飯の上に味をふくませた魚や肉、きゃらぶきやなめ茸など好みの具をのせて。「玉子焼きを添えると、味を上手にまとめてくれます」
<料理/横山タカ子 撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子>
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県生まれ、在住。“適塩”の調理や長野の食文化を生かすレシピに定評。失敗しない梅干し「さしす漬け」をはじめとする、梅の保存食づくり40年の集大成的レシピ集『私の梅仕事』(扶桑社)、『四季を味わう 私の「木の実」料理』(扶桑社)も好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです