• フードロス削減の意識が高まるなか、パンをひとつも廃棄しないパン屋さんが広島にあるといいます。つくるパンはほぼ4種類で、余暇はたっぷり。それでも豊かに暮らしていける理由をブーランジェリー・ドリアン店主の田村陽至さんにお聞きしました。
    (『天然生活』2021年6月号掲載)

    思い切った方向転換により“捨てない”パン屋が誕生

    田村さんは2009年ごろからたくさんあったパンの種類を徐々に減らしていましたが、帰国後はついにカンパーニュ、ブロンという2種類に限定

    その代わり、北海道十勝で生産されたビオの小麦を石臼で挽いた香り高い粉を使い、自家製のルヴァン種で発酵させ、祖父の時代への原点回帰で薪窯を使って焼くことに。

    画像: 店頭にうず高く積まれた薪。木が蓄えた命が炎となって燃え上がり、パンに命が宿る

    店頭にうず高く積まれた薪。木が蓄えた命が炎となって燃え上がり、パンに命が宿る

    画像: 下部で薪を燃やし、窯全体を高温にしていく。窯は母で、パンは子どものような存在

    下部で薪を燃やし、窯全体を高温にしていく。窯は母で、パンは子どものような存在

    原価は約2倍に跳ね上がったものの、中に何も入れないシンプルで大きなパンはひとりで焼くことができ、人件費がかからないため、売り値は据え置きに。薪窯は温めや温度調整に時間がかかるため、一度に75個ものパンを焼くことができる大型の窯も自作しました。

    結果、労働時間は大幅に短縮、寝る暇もなく働いていたのが、午前4時から午後12時、遅くとも午後2時には仕事が終わる生活に。

    また、定期購入者が増えたこともあり、去年の夏に店舗売りは終了。これまで店舗で売れ残ったパンは信頼関係のある食堂や有機野菜の店などに託し、むだにしないようにしていましたが、予約販売が基本になったことで廃棄は完全にゼロへ。「捨てない」ことはいまでは店の誇りになっています。

    画像: クープを入れる作業。同じようにつくっても、ひとつずつ、個性的な表情に仕上がる

    クープを入れる作業。同じようにつくっても、ひとつずつ、個性的な表情に仕上がる

    「うちがつくっているパンは焼きたてよりも、翌朝以降の方がおいしいんです。店舗売りをしていたときも、当日は食べないでくださいね、とわざわざお伝えしていたほどです。焼きたては外側がパリパリに乾燥していて、中はしっとりしている状態。翌日以降になると、全体の水分が均等になりますから、中身の水分が皮に移り、皮が湿ることで香りが出てきます。日持ちもするので、店頭販売にこだわらなくても、売りやすいパンなんです」

    ブーランジェリー・ドリアン
    広島県広島市南区堀越2-8-22 
    ※現在、店舗販売休業中。ネット販売のみ。
    ※お問い合わせ先:✉derien_info@me.com
    https://derien.jp/

    <撮影/森本菜穂子 取材・文/野崎 泉>



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